シンポジウム「長良川河口堰運用5年目・被害の実態を科学が問う」
私達は、1995年7月6日に長良川河口堰が運用されてからも、なんとか長良川を救いたいと毎年国
際シンポジウムを開催し、建設省に世界の潮流を知らせ(アメリカ開墾局などが協力してくれましたが、
それでもけっこうたいへんでした)たり、市民に望まれない不要な公共事業をやめ、民意が必要とする公
共事業に税金を回せるようにすべきと各党に要請し続けたりして、今日の河川法改正やダム計画の見直し
などの“風”をつくってまいりました。今や吉野川では、市民がもはや政治を超えてしまったというのが
現実と考えています。
長良川河口堰につきましては、運用を決断した野坂建設大臣は二つの前提条件を出していました。「(運
用しても)被害は軽微と考えられるので運用する」「モニタリングを(日本のダムで初めて)5年間つける
ので、問題があればそこで解決すればよい」
。しかし、被害は誰の目で見ても明らかにあるにもかかわら
ず、環境庁は今はまだ「水質の数値に問題がないので…」と言いよどんでいます(建設省が数値が悪くなり
そうになると勝手にゲートを開放しているためであることは明白なのに)。
モニタリング委員会は、亀井静香建設大臣が私達の直接申し入れで公開にしてくれたもののそれ以降は
二回しか開催されておらず、それ以前の委員会では記者発表時に4時間の内容が20分につづめられ、い
つも「問題ない」と報道されていました。
私達は、長良川は全国の川の身代わりになって運用され、河川法を改正させ、公共事業のあり方を問う
たと考えています。しかし長良川自身は瀕死の状態です。縄文杉は、
屋久島を守るために登山客の足下
に耐え、
屋久島を世界自然遺産にしてやっと今、保護の手を受けて、やすらかな老後を迎えています。
私達は長良川も今なら救ってやれると考えています。いえ私達こそがその任務を持っているとこの4年
間運用されても国会や皆様に、運用と被害を問い続けてまいりました。
この7月6日、河口堰運用は5年目、モニタリング最後の年を迎えます。サツキマス、アユは激減し、
シジミは絶滅。ヘドロは2メートルもたまり、日本一高い環境ホルモンが発見され、「高くてまずくて危
険な水を飲まされるのはごめんだ」と愛知や三重の私達の知らない人々までが裁判を起こしています。
漁協もやっと被害を公に訴え始め、過去のある漁協の着工同意は違法であったことが裁判で認められ、
地方自治体も水需要はないと発言し始めました(負担に耐えられないからです)。北川石松環境庁長官が
閣議懇でも決算委員会でも問題にされた93年の国土庁のフルプランが根拠のないものであったことも
ようやく今、明らかになりました。
3月末、日本生態学会が現行のモニタリングでは救えないと、「ゲートを上げたモニタリングを新たに
5年間せよ」との意見書を挙げ良心派と聞く真鍋環境庁長官にまもなくこれを手渡し、視察をあおがれる
と聞いています。
元環境庁長官の、大石武一先生、
鯨岡兵輔先生、北川石松先生、岩垂寿喜男先生はこのたび、「長良川の
救済を考える議員の会、OBの会」を作ろうと呼びかけ人になってくださいました。
7月4日に私達は下記のようなシンポジウムを現地長島町で開催します。同日AM10:00からは底層
調査船も仕立てます。
シンポジウム「長良川河口堰運用5年目・被害の実態を科学が問う」
主催 「長良川河口堰建設をやめさせる市民会議」(53団体)
場所 三重県桑名郡長島町公民館
日時 1999年7月4日(日) 午後1時〜5時
内容
来賓挨拶 元環境庁長官 岩垂寿喜男
(「長良川の救済を考える議員・OBの会」呼びかけ人)
河口堰運用後の現状報告
粕谷 志郎 岐阜大学教授・長良川下流生物相調査団
被害の実態
・渡辺 謙二 長良川中央漁協理事
・大橋 亮一 長良川漁協副組合長
・水谷 隆之 赤須賀漁協組合員
・杉江 節子 常滑市議会議員
・開発美佐子 亀山市に河口堰の水をひく事に反対する会
ゲートをあげて、あらたなモニタリングを
竹門 康弘 日本生態学会自然保護専門委員会
新しい河川行政に欠かせない、長良川の解決
吉田 正人 日本自然保護協会保護委員長
現行モニタリングの現状
奥田 節夫 岡山理科大学教授
事業目的なき河口堰の債務
村瀬 惣一 長良川河口堰建設差し止め訴訟原告団長