ダム貯水池からCO2が放出されている

故竹下元首相が「地球の温暖化を防ぐためにダムを造らねば」といっていたそうですが…。


以下の文章は2000年6月、気候変動枠組み会議において世界ダム委員会が発表した概説からの抜粋です。

 これは、2000年2月にモントリオールで世界ダム委員会とハイドロケベック(カナダの公共事業体)によって召集された、ブラジル、カナダ、フィンランド、フランスおよび米国の19名の主要な気候科学者からなる研修会において明らかにされました。

・測定が行われた世界各地の30ヶ所全てのダム貯水池で温室ガス(メタンや二酸化炭素)の排出が確認されました。これは一般に普及している、ダムからの放出がゼロかそれに近いとする仮定とは対照的な結果です。

・カナダやスウェーデンなどの北の地域における研究では、水力発電ダム湖からのガス排出量は低いことを示唆しています。

・ブラジルの10個のダムの研究では、それぞれのダムのガス排出量が非常にばらついており、最大のものと最小のものでは500倍の差がありました。最小のものはカナダの貯水池や湖と同じレベルの排出量であり、最高のものは火力発電所の水準に達しました。

・水没した生物量だけでは、計測されたガスの排出量の説明がつきません。炭素は上流域全体から貯水池に流れ込み、流域の開発や水源管理の活動によって貯水池に流入する炭素が増えたり減ったりします。

・水力発電は火力発電に比べて温室ガスの排出が少ないという演繹的仮定はできません。正味の排出量は個々のケースに応じて確定されなければなりません。

世界ダム委員会のジェミー・スキナーはこう語りました。「要するに、貯水池が温室ガスを排出するといっても、それは場所や規模や時間やどのように他の選択肢と比較するかという文脈から切り離して語ることはできない。さらに、この問題に関する科学は未熟である。したがって、水力発電は火力に比べて温室ガスの排出に関してよりクリーンで、だから炭素排出権を獲得する資格があるという前に、追加調査が必要である。」

「貯水池が温室ガスを排出するという発見だけでは、それが地球温暖化に最終的にどんな寄与をしているのかを決定するのには不十分である。例えていえば、牛や牧場はメタンを排出するが、草原の鹿や腐った草もそれは同様である。温室ガスや気候変動に関わる国際共同体や各国政府が問題にしなければならないのは、彼らの決定によってもたらされた正味の変化であり、その事業が他の選択肢より現実に少ない排出量であるかということだ。」

貯水池のガス排出は、地理や標高や緯度や気温や大きさや深さやタービンの取り入れ口の大きさやダムの管理法や建設方法によって大きく変化します。これらの要素がすべて、複雑な生化学の反応の中で影響しあって、各貯水池のガス排出量を決めるのです。

 すなわち、気候変動に対するダムの影響について「良い・悪い、クリーン・汚い」という簡単な決め付けは、各国がその研究に時間と資源をつぎ込まないかぎりできません。複雑だからといって手をこまねいていることは、突然で劇的で望ましからぬ結末をもたらすかもしれません。

たとえば、ノルウェーでは環境上および社会的な懸念から、水力発電の一部を一時停止としています。一方、天然ガスについても環境上の理由から反対が起きています。この議論の結果、政府は崩壊しました。

 ガス排出に関する現時点での知識レベルを示すこの小論文について、気候変動枠組み会議に関わる諸団体は強い関心を示しているようです。世界ダム委員会は2000年11月に最終報告と結論を発表する予定です。
 
以上、抜粋でした。


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