シンポジウム「公共事業をどうする!」
−財政危機と河川局の変革をふまえて、"ダム"を見直す-
レポート

稲見 哲男氏の報告から転載

★2月18日午後1時から、北浜のコスモ証券ホールでNGO団体が手づくりの「公共事業をどうする」シンポジウム開催されました。12時過ぎからそれぞれのNGOの呼びかけに応えた多様な参加者が会場に駆けつけ受付は一杯、ほぼ満員の300名が集まり成功でした。民主党の自治体議員が多数駆けつけてくれたことも良かったと思います。

★天野礼子さんの総合司会で、第1部では利水と治水に分けて、嶋津先生、高田先生から基調講演を受けたあと、「紀伊丹生川ダム建設を考える会」「安威川ダム反対市民の会」「槙尾川ダムの見直しを求める連絡会」「武庫川を愛する会」がそれぞれ活動の経過と“無駄なダム”についての意見発表を行い、議会の側からは大阪府議会議員、民主・府民ネットワークの中川治さん、「森林は公共財・公的財政支援を」の立場から、全林野労組委員長の坂手一至の参加もいただきました。

★それぞれ、プロジェクターを使っての説明などはわかりやすかったのですが、時間がなく発表者にも会場の参加者にも少し不満が残ったと思います。

★3時半から1時間余り鳩山由紀夫代表も参加して五十嵐敬喜法政大学教授、天野礼子さんとの対談が行われました。政局がらみで朝日新聞や毎日新聞に記事が掲載されていますが、対談の中身について少しふれておきます。少し遅れて会場に到着した鳩山さんにシンポジウムを開催に至った経過などが天野さんから説明があったあと対談が始まりました。

◇五十嵐:@代表は科学者だが、公共事業においてインチキな数字がまかり通っている。市民と学者の共同作業で対応可能になってきているがA行政のチェック機能・議会のチェック機能・司法のチェック機能が十分働いていないBこれもマスコミと市民の力で変わりつつあるが、誰が責任を取るのか明確でないCそのため、子どもたちが大人の世界を信じない、外国の目が厳しい、といった政治全体の問題になってきている。

◆鳩山代表:@必要だという論理付けのために数字のマジックが使われ、結果を信じ込まされている。原子力発電のための電力必要量、ダムのための水需要や治水のための高水量、入力の正しさなどデータのチェックが必要。A議会のチェック体制において県レベルで「与党志向」があるとチェック機能に問題が生じる場合がある。相乗り推薦しないとか、高齢・多選はだめとかルールを作って例外なく守ることが必要では。B行政と司法のチェックは野党では迫力に欠ける、政権をとって大手術する中で生き返る可能性があるC政治が全ての最終責任をとるべきだが、公共事業においても、国から地方に取り返し、市民事業として行政を巻き込んで市民が決めることになればそこにも責任は生じる。

◇五十嵐:与党でいたいというのは何が都合が良いのか、利権、選挙をやりやすい、集票マシンが働くということでないのか。

◆鳩山代表:最初に民主党を立ち上げたときには、私利私欲でない、利権政治を打破しようと集まった。政権をとっても権力志向をもたない。真に公平・公正な政権をめざすが、そのためには私利私欲のない人々に応援してもらわなければならない。

◇五十嵐:長野県の田中知事の人気は91%と圧倒的だが、利権と無関係なところにその要素がある、民主党全体が鮮やかに脱却できたかというとそうは思えない。

◆鳩山代表:権力を握った上で本当に脱却できるかどうかが問われる、野党でいる間は言うが迫力はない。公共事業全廃はおかしい、社会資本整備は必要であり、5年で3割、10年で5割無駄な事業を削減する目標と計画を明らかにする。

◇五十嵐:民主党は業界・労働組合から自立しているのか、裏で何かあるのではないかと疑念をもたれている。また、ヨーロッパやアメリカの政治と違って、日本には内部告発というものが皆無だ。学者も、細川内閣以降の事業評価委員会で何もせず御用学者になってしまっている。

◆鳩山代表:労組の応援は感謝しているが、裏で何かするのではなく、表で政策について激論を交わす。組合にも与党的体質や文句の言えない良い子に育てられている面があるとすると、教育にも責任がある。黙々とこなすことが正しいことから、自己主張・自立促進の「個としての自立性」を高める小中学の教育が必要だ。参院選のためのアンケートにおいても公共事業を大幅に削減することに賛成8反対2の割合だ。

◇五十嵐:亀井さんが見直しに頑張ったが中止したのは270事業2兆円にすぎず、7万件ともいわれる公共事業全体からすると微々たるものだ。公共事業の縮小にともなう倒産や失業についてもダメージを少なくする方法を考えなければならない。

◆鳩山代表:地方分権の中で「国営事業」と「市民事業」にわけ、公共事業に依存しないで自立できるかが問われている。「公共事業を国民の手に取り戻す委員会」の最終答申を2月末にもお願いしているが、政権をとれば直ちに5年から10年の青写真を示す勇気が必要だと思う。赤字国債や建設国債に依存して景気対策に使うことは止め、1年・2年・5年・10年の苦しいが努力するメッセージを国民に伝えなければならない。雇用の問題についても土木事業より福祉の施策の方が2倍の雇用効果があるといわれており、例えば、土木公共事業を2兆円減らしても、社会保障や福祉に1兆円投入すれば同じ雇用は守れる。

◇天野:太田知事や民主党大阪府連に安威川を含む全てのダムについて見直しを進言してもらえるのか。

◆鳩山代表:はじめから全て聞いておらず、データを持ち合わせていないが、知事が再評価すると約束しているなら、きっちりそれを行ったのかどうか、市民や府民の声を太田氏に伝え真剣な対応を要請する。今年中に政権をとれば一旦全ての公共事業を凍結し、2年以内に結論を出すと言っており民主党代表者として真剣に伝える努力をさせていただく。

◇五十嵐:国会はスキャンダルの追及ばかりになっている、早く政策を徹底的にディベートする国会に切り替えてほしい。

◆鳩山代表:全く同感だ。今の国会は情けないの一語に尽きる、森首相のすげ替えだけでは何も変わらない。自民党政治を終わらせるためにこそ頑張る。[文責:稲見、2月18日]


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