ハーリングフリート河口堰の代替的管理

スタン・カークホフス
交通・公共事業&水資源管理省


ハーリングフリートはライン川の唯一の河口です。であるからその河口堰を開けることには大きな意味があるのです。
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はじめに
私の原稿は以下の順で構成されています。
・私が働いている交通・公共事業&水資源省の役割
・ハーリングフリート河口堰の代替的管理における具体的な問題。この点においてはまずその堰建設の背景、そして現在のその地域における問題の順で述べます。
・実施された環境影響調査(EIS)への言及。その中には選択されている代替的管理法(いわゆる「コントロールタイド」)が含まれています。この案は我が省の第4次水管理国家政策文書に含まれており、それは現在も進行中です。さらには我が省がいかにコミュニケーションをはかっているかについても述べます。その後でいわゆる「水門を少し開ける」を意味する「コントロールタイド体制」の実施の最初の段階について触れ、さらにはその財政的側面、実施計画の時間を考慮にいれた具体案について触れます。
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1,使命
 我が省の使命は我が国の交通と水システム問題の解決策を見つけることです。その主な仕事は洪水から国土を守り、質の良い水の供給を確保し、道路や水路の安全性を確かなものにすることです。

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2,背景
 1953年に我が国では大きな災害がありました。オランダの南西部が大きな規模の沿岸洪水に見舞われたのです。1800人の人が溺れ死に、多くの家畜が失われました。その地域は広い範囲で荒廃してしまったのです。そこで政府はこのような災害が二度と起こらないようにしなければならないと決意したのです。それにより1958年のデルタ法が制定されることになりました。
この法律は、沿岸の防備を強固にし沿岸からの入水を締め切ることにより洪水を防ぐと定めています。この制定によりグレベリンゲンは1971年にせき止められ、ハーリングフリートは水門を組み込んだダムとの併用で1970年に締め切られました。そして最後にイースタン・シュケルトとニュウ・ウォータウエィが高潮対策バリアで1985年と1997年にそれぞれ締め切られました。今やオランダは安全となったのです。

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3,その地域の概要
 まずライン川とマース川の流域についてから話し始めましょう。それから少しオランダとライン川、マース川の河口、ハーリングフリート、ホーラッツディプ、そしてビスボスについて触れます。
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 ハーリングフリートはライン川とマース川の河口部にあります。ライン川の流域は18万5千平方メートルに渡り、マース川の流域は3万5千平方メートルです。ライン川の平均流量は2200立方メートルで(毎秒600?12600立方メートル)マース川の流量は毎秒230立方メートルです。(0?3000立方メートル)
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 ライン川の水は北部のアイソ川を通り、ハーリングフリートとニューウォーターウェイを通ってオランダを通過していきます。マース川はまさしくハーリングフリートとニューウォーターウェイを通って海に流れていくのです。
 オランダはライン川、マース川そしてシェルト川によって形成されました。国土面積は4万平方キロメートルに及び、そのおよそ50%が海面より低いのです。私はロッテルダムで働いているのですが、運の良いことに私の事務所は15階にあります。アムステルダム、ロッテルダム、ハーグのような都市の何百万もの人々が海面下で暮らしているんですよ。想像してみて下さい。
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 私はまずハーリングフリート河口堰のできる前とできた後のハーリングフリート、ホーラッツディプ、ビスボスの河口の様子から話しましょう。その中でハーリングフリート河口堰についてさらに詳しく述べます。
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ハーリングフリート河口堰が1970年に完成する前は海水が毎日二回ハーリングフリートを出たり入ったりしていました。ですから干潮、満潮の差は沿岸部では1.8メートル、ビスボスでは2.25メートルもありました。川の排出量の多い時には淡水と塩水の混ざり合う範囲は西に延び、逆に排出量の少ない時には東へ延びていました。そして排出量が平均である時、ハーリングフリートは汽水域でした。魚は自由にその辺りを行き交いし、ハーリングフリート、ホーラッツ・ディプ、ビスボスはその広い部分が芦原やい草や柳といった典型的な湿地、干潟の様相を呈していました。
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 その頃、ハーリングフリート、ホーランド・ディプからは塩分が含まれ過ぎていたため飲み水や農業用水として水を使用することはありませんでした。
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ハーリングフリート河口堰の幅はおよそ3キロメートルです。ハーリングフリートダムの総長はおよそ2キロメートルでそこに約1キロメートルの水門がさらに延びています。現在の河口堰の運営体制はハーリングフリートの水が淡水のままであるようにとされています。河口堰が開けられるのは干潮の時のみで、その時には海側の水面の高さが陸地よりも低くなるのです。
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川からの流量が低い時には河口堰は閉じられたままとなり、その時全ての水はニュー・ウォーターウェイを通って海に流れます。川の流出量は平均的な時は(毎秒1500立方メートル)それに応じた水が水門を通って排出されます。河口堰の運営における一番重要なことは洪水を防ぐことです。そして付属的な目的として農業や飲み水用の良質な水の供給や船の運航に必要な十分な深さの水の確保などが挙げられます。
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1970年にハーリングフリートを締め切ったことにより、経済的な恩恵は
ありましたが次第に自然や環境に対するマイナスの影響が出てきました。例えば干潮・満潮の差は2メートルもあったのにわずか30センチなってしまいました。塩が少しずつ淡水に混ざることは河口の重要な特色なのですがそれが失われてしまい、サケや海マスのような魚の遡上も遮られてしまいました。また塩の活動の範囲がせばまったために波は常に土手の同じ所に寄せていることになり、このことが何百ヘクタールもの芦原やい草を喪失させたり、土手の木の根をむき出しにすることになったのです。このような浸食は土手の補強工事によって大方くい止められました。水の動きが減ったことは結局ビスボス、ホーラッツディプ、またハーリングフリートにおける何百万トンもの汚染された堆積物を生み出しました。ただ運の良いことにライン川の水質は70年代から改善され、広い地域に渡って汚染された堆積はその後のきれいな堆積により覆われています。しかしそれでも何百万トンもの汚染された堆積が我々の生命や川の周辺にマイナスの影響を与えるのを防ぐためにも、これらはやはり取り除かれねばならないのです。
現在のところ、ここの水は淡水なので飲み水や農業用水、産業用水として引き込まれ使われています。
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このスライドにおいておわかりのようにハーリングフリートは現在のところ淡水となっており(青で示してある。)汽水域は消えています。そしてハーリングフリート河口堰は淡水と海水とをはっきりと仕切っているのです。
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このスライドでは干満の差が少なくなったために土手の浸食が進んだ様子を表しています。
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この上空からの眺めは川の土手の浸食を止めるために我々が作った土手の補強です。
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このスライドが示しているのはビスボスからハーリングフリートにかけての河口における堆積物です。1970年以降、非常に大量の堆積がビスボスやホーランドディプに蓄積されました。もし河口堰の運用法が今のままならば2100年にはもっとずっと多くの堆積があると思わなければなりません。

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ハーリングフリート河口堰、代替案の環境アセスメント
 この環境アセスメントの目的は、河口堰の運営法を変えることにより、現在の経済もしくは水使用を失わずに汽水域の再生を取り戻すことができるかどうかを調べることでした。河口堰は嵐で高波の恐れのある時にはいつも閉じられることになっています。もちろん治水は一番大切なことだからです。
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3つの代替案を含め河口堰の運営案が検討されました。「現在の体制」、「ブロークンタイド」、「コントロールタイド」、「ストームサージバリアー」がそうです。これらの体制のそれぞれの違いは水門を開ける幅とその期間が違うことです。
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現在の体制のもとでは河口堰の水門は常に閉じられていますが「ストームサージバリアー」体制のもとでは水門は常に開けられています。その中間に位置する体制「ブロークンタイド」、「コントロールタイド」では川の流量が少ない時にはいつでも塩の侵入を防ぐために水門が閉じられます。
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それぞれの代替案は社会・経済的な見地からだけでなく、形態学、水門学的、化学的、生態学的な見地からも調査されました。飲み水の生産、農業用水、漁業、船舶、レクレーションと産業。さまざまな観点から議論され、マイナス面が明確にされたことがらに関してはいかなる可能な補償的処置が検討され、その特徴やコストも明確にされました。
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この環境アセスメントの主な2つの結論は以下のものでした。
・ 水門をできるだけ開けることにより河口における維持可能な生態系の発展を最大限に促進することが出来得る。その点では「ストームサージバリアー」体制が野生生物や環境にとっては一番良い。
・ これら3つ全ての代替案におけるマイナス面は補償的処置によって相殺されることができる。そのようなコストにおいて一番高くつくのは「ストームサージバリアー」であろう。
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生態系の再生、経済面、補償問題などを全て考慮に入れてその恩恵を考えてみると「コントロールタイド」体制が好ましいと選ばれたわけです。このグラフにおきましてX軸はコストを示し、Y軸は生態系再生における恩恵を示します。この赤い線はコストで、緑の線はこの地域の河口の再生状況を示します。そしてそれぞれの代替案が左から右に「現在の体制」から「ストームサージバリアー」まで示してあります。これからもわかるように「コントロールタイド」体制のもとではかなり急速な自然の再生がもたらされ、一方「ストームサージバリアー」体制のもとでは補償処置のためのコストが急激に増加することがわかります。
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5、「コントロールタイド」:選出された体制
「コントロールタイド」体制のもとでは95%時において水門の3分の1が開いている状態となります。
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ハーリーングフリートが再び汽水域となり、ハーリングフリート、ホーラッツディプ、ビスボスに潮の活動が戻れば河口の生態系を取り戻すことが出来るでしょう。さらに回遊魚も再び河口を行ったり来たりできるようになるでしょう。しかし、農業用水や飲み水の生産を続けるためにはハーリングフリートにおける取水口はもっと東へ移されることになります。そしてライン川の流量が低い時には余分な塩が侵入してくるのを防ぐために水門は閉め切られます。ただこれは年間を通して20日程しかないようです。船舶のための水量を確保するためには浚渫をして船が通れるようにしてやる必要があるでしょう。さらに現在の固定式の桟橋を浮遊式のものに取り替えてやらなければなりません。

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短期的・長期的な恩恵
「コントロールタイド」が選択されたのは淡水から汽水域に少しずつ変えていこうという目的に合致していたからです。
また、現在の体制と比較すれば潮の活動が増えることにより、ハーリングフリート、ホーランドディプの堆積は減少するでしょう。そして長い目で見れば、これはかなり浚渫の費用を減らすことになるのです。もし現在の体制が維持されれば船舶の利用を維持するためのコストはもっと上がります。さらに川の流量が多い時にその排出能力を維持するためにやはり浚渫が高くつくのです。 

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6,第4次水管理政策
第4次水管理政策には我が省は将来のハーリングフリート河口堰の運用において「コントロールタイド」体制を確立するために努力すると明言しています。そしてそのために3段階に大きく分けた手順を踏むことになっています。この段階毎のやり方を採択したのはこの河口における塩分と潮の活動が増えることによって引き起こされる問題を解決するための時間をかせぐためです。水門を開く最初のステップは2005年となっており、この体制が完全に実施されるのは2015年だとされています。そして次の段階に進む時にはその都度意志決定の手続きが取られることになっています。

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7、コミュニケーション
とても重要な点です。ハーリングフリート河口堰の代替案の環境アセスメントは私が働いている省と農業、自然管理と漁業省そして2つの州によって行われました。そしてそれは水委員会、水を供給する会社、農業団体の代表的組織、レクレーションや自然保護団体などさまざまな団体に対して常に相談をしながら行われました。このように幅広い分野でまたさまざまな団体に相談をしながら調査をおこなったので、はじめはこのプロジェクトに反対していた人々の態度も軟化し、条件付きで賛同してくれました。
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ハーリングフリートの周辺に住んでいてハーリングフリート河口堰の操業法の変更によって影響を受けると思われる人々には、特別な新聞を通して提案されている体制が導入された時に予想される結果が詳しく説明されました。さらに夕方の情報公開ミーティングにおいてはデジタルビデオディスクを使ったプレゼンテーションも行われました。それを何度もやったのです。さらにこの計画に対して一般の新聞、テレビにおいてかなりの量の報道もされました。環境アセスメントが終了した後も量的には減ったものの、そのような情報公開の努力は続けられました。人々に情報を提供し続けるためにホームページが設立され、このプロジェクトによって得られた知識、情報が保存されています。あなたもいつでも覗いてみることができます。アドレスは:www.haringvlietsluizen.nlです。

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8,「コントロールタイド」体制を実施するにあたっての最初の段階:「スルーシスアジャー、少し開けるの意味」
この最初の段階においてハーリングフリート河口堰は塩分が調整され、生態学的な再生が促進されるように操業されなければならない。

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塩分の調整
現在の体制のもとでは潮が高い時には水門は閉められています。新体制の最初の段階では干潮の時も満潮の時も常におよそ10%程水門を開けたままにして、ハーリングフリートの東の端は淡水の状態で残るように操業します。西の方にある飲み水、農業用水用の取水口だけは移されねばなりません。ライン川の流出量が低い時(毎秒1000平方メートル以下)には現状の体制が取られます。これは必要以上の塩の侵入を防ぐためで、「コントロールタイド」体制のもとでは、これは年に20日程しか必要ありません。
開放する部分が限られているため、ハーリングフリート、ホーランドディプ、ビスボスにおける船舶を考えての水位の減少はわずか5センチ程になりそうです。これは自然界における川の流量の変化や風の影響によっても起こりうるレベルです。港は変わらず操業できるでしょうし、船の船舶所も修正の必要はないでしょう。つまり、この点においては補償的処置がいらないということです。
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このスライドはハーリングフリート水門が少し開けられた時、ハーリングフリートの西側は再び汽水域に戻ることを示しています。この塩の侵入のために飲み水、農業用水用の取水口は移転されなければならないのです。

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生態学的再生
最初の段階において水門は回遊魚が戻って来るには十分のレベルで開放されます。サケや海マスは再び上流の産卵地や稚魚が育つ所まで到達することができます。さらに淡水から海水への少しずつの変化を取り戻すことができます。すなわちハーリングフリートの西側は再び汽水域に戻るのです。

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9、財政的見解
この計画の最初の段階の実施にはおよそ3200万ユーロ(2800万U.S.ドル)かかり、この支出のほとんどが飲み水と農業用水の移転費用です。これは大きな金額です。我々の税金を使ってこのようなことをするわけですからみなさんも国会での審議がいかに大変だったか想像できるかと思います。運良く、議会は我々の提案に賛成してくれましたが、かなりの努力を必要としたんですよ。

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10、タイムテーブル
最初の段階が2005年に実施される前にいくつかの方策を採っておかなければなりません。我々は取水口を移転し、ベースラインとなる状況を明確にし、水門を開けたことによって起こる塩の侵入とその他の変化を観測するネットワークを設立しなければなりません。議定書は、交通、公共事業と水系管理省、新体制に関する水委員会、水供給会社によって合意されたそれぞれの使命の記録のもとに作成されます。これらは操業、警報的手順、観測、計算の実施、コンサルティング、情報の提供などの事柄におよんでいます。
 水門の開放の結果起こってくる変化は毎年、大きくまとめてさらに5年毎に評価されます。この詳細に渡った評価にもとづき「コントロールタイド」への完全実施を早急に進めるのか中間的処置を取るかが決定されます。

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11.結論
この時点にてわかってきた大切な点は:
さまざまな政府当局とハーリングフリート、ホーランドディプ、ビスボスの水利用者が密接にコミュニケーションを取り合い、水門の操業変更によって起こるプラス面、マイナス面について早い時点で明確にし確認した。これが結局は注意深い意志決定につながっただけでなく、最初は反対していた人々の態度も軟化し、条件付きで賛同してくれるようになった。
現在のハーリングフリート河口堰の操業の修正により、ライン川、マース川の河口の生態系を再生することが期待できる。
塩分と潮の活動の増加によって起こるほとんど全てのマイナス面は機能的には取水口を移転する事、追加の浚渫、さんばしを修正することで相殺することができる。
短期的に見れば補償的方策はコストがかかるが(例えば取水口の移転)、長い目でみればコストの節約となる。(例えば治水のための浚渫の必要性が減る。)

 水門の操業体制を変えるための決定にたどり着くためには随分時間を費やしました。過去においてハーリングフリートを淡水化しようと選択した人々にとってはそう簡単に気持ちを切り替えられるものではありません。以前に出された決定を修正もしくは改訂する時には、多くの議論と情報の公開、そしてさらには政府当局などにおいて新たな人材の登用といったものが必要でありましょう。


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