どうする?長良川河口ぜき対応 田中知事「変えよう公共事業」 NGOの会参加
中日新聞 朝刊 20010708 第2社会面 038頁 0477字
本格運用から六年たった長良川河口ぜき(三重県長島町、桑名市)の現状を考える「長良川デー2001」が七日、長島町の長良川左岸河川敷であり「脱ダム宣言」の田中康夫長野県知事が出席して「とにかく公共事業のあり方を変えることだ」
と発想の転換を訴えた。
全国の非政府組織(NGO)四百二団体でつくる公共事業チェックを求めるNGOの会(天野礼子代表)の主催。
田中知事が壇上に現れると、約二千人の参加者からは大きな歓声。脱ダム宣言について「できる限りコンクリートのダムをつくらないと謙虚に言ってるだけ。それが新聞紙上では強権的だと報道されている」と説明した。
そのうえで「ダムは、治水や農業のためというよりも、組織を維持し、お金を循環させるための装置として造られてきた」という見方を披露。 「河川は河床整備、護岸改修、森林整備が大事。公共事業のあり方や税の使い方を改め、地球を本来の姿に戻そう」と呼び掛けた。
長良川河口ぜきに関しては「ここにも水資源開発公団という皆さまが、大変立派な物をお造りになられて」と皮肉った。
田中知事は、八日も河口ぜき周辺でのデモ行進に参加する予定。
諫早湾と一緒 反対派が長野知事招き集会 長良川河口堰【名古屋】
朝日新聞 2001.07.08 名古屋朝刊 30頁 2社 (全428字)
運用開始から6年が過ぎた長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市、長島町)をめぐり7日、反対派の市民団体が現地で集会を開いた。河口堰は、周辺自治体で「水余り」が現実となり、ほころびが見えている。「脱ダム宣言」をした田中康夫・長野県知事らも参加し、公共事業の見直しを口々に訴えた。
河口堰近くの河川敷で開かれた集会で田中知事は「日本のダムは、治水が目的ではなく、巨額なお金が動く循環装置だから造るんだ」と指摘。「脱ダム宣言は、税金の使い方、人間の暮らし方を述べた」と話した。
これに先立ち、長島町中央公民館で開かれたシンポジウムでは、日本自然保護協会の吉田正人常務理事が「泥のたい積など、河口堰は諫早(いさはや)湾干拓事業と似ている。長良川でもゲート開放を検討すべきだ」と主張した。
長島町議の大森恵さんは総務省が6日、水需要予測が過大で、水が余っていると指摘したことに触れた。「水道料を上げてダム建設費を負担しなければならない自治体は悲鳴をあげている」などと報告した。
生き物痕跡ない 長良川河口堰本格運用6年、川底を調査【名古屋】
朝日新聞 2001.07.06 名古屋夕刊 10頁 2社 写図有 (全370字)
長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市、長島町)の本格運用が始まって6日で6年がたった。
この日、「長良川河口堰建設をやめさせる市民会議」(天野礼子代表)などが、堰の下流約600メートルで、川底のヘドロを調べた=写真。ダムの撤去などによる生態系の回復にかかわった経験のある米国などの水問題研究者2人も招待した。
調査では、船上から筒状の道具を川底に刺し、深さ約1・8メートルの泥の層を抜き出した。米国のデビッド・ウェグナーさんは「生き物の痕跡がない」と指摘。
オランダのヘンク・サーイスさんは「環境も安全も守るすべての選択肢を出すべき」と述べた。
同会などは、7日午後1時半から長島町公民館で、「河口堰の現状をただす」シンポジウムを開く。午後6時からは、堰近くの河川敷でイベント。「脱ダム宣言」の田中康夫・長野県知事が「ポスト公共事業」と題し対談する。
どうする?長良川河口ぜき対応 民主党は「まず柔軟な運用を」 方針を一部修正
中日新聞 朝刊 20010708 第2社会面 038頁 0344字
民主党のネクストキャビネット(次の内閣)は七日、三重県の長良川河口ぜきについて遅くとも三年以内にゲート全面開放の措置を講じるとした従来の党方針を「まずゲートの柔軟な運用を常時行い、三−五年程度の時間をかけて全面開放へ移行する」などと一部修正したことを明らかにした。
同県長島町で市民団体がシンポジウムを開いたのに伴い、ネクストキャビネットの社会資本整備担当の前原誠司衆院議員らが記者会見した。
同党は昨年八月、環境保全の観点や水余りの状況から全面開放の方針を打ち出したが、地元の三重、愛知両県連が「一方的に全面開放するだけでは、水利権を失った地元自治体に借金が残る」などと疑問を投げかけていた。このため、今回の党方針には「関係自治体が抱える債務は今後国の責任で措置する」との文言を盛り込んだ。
民主県連、中央と歩調(01年参院選日誌 7月7日)
【名古屋】
朝日新聞 2001.07.08 名古屋朝刊 30頁 2社 (全901字)
民主党本部と東海3県の県連が7日、長良川河口堰(ぜき)への対応で足並みをそろえた。公共事業見直しに積極的な党本部に県連側が歩み寄り、結論は「3〜5年かけ全面開放」。しかし、今も内部には様々な意見があるうえ、参院選直前の駆け込み決定に、対応の遅さを嘆く声もある。
7日、三重県長島町で開かれたシンポジウム。終了後、同党ネクストキャビネット社会資本整備担当大臣の前原誠司代議士が記者会見し、「塩害の計測や取水口の移転などをしたうえで、3〜5年かけて堰の全面開放へ移行させる。開放に伴うコストは国が負担する」との方針で、3県連と合意したことを明らかにした。
同席した中川正春三重県連代表も「既に県知事にも民主党の方針として伝えた」と胸を張った。
しかし、党本部と三重県連は激しく「対立」してきた。総選挙前の昨年5月、菅直人政調会長(当時)が河口堰を訪れ、「堰の開放を選挙公約に入れたい」と発言したのがきっかけ。8月には前原氏も「3年以内に全面開放する」との方針を発表した。
県連は「全く相談なく方針が出た。地方組織をどう考えているのか」と反発。9月には、党本部に「塩害がないと立証されていない。ゲートの全面開放は疑問」とする質問状を出した。
ぎくしゃくは、三重県連だけに限ったことではない。上水の供給を受けている知多地域を抱える愛知県連、治水の恩恵をこうむるとされる岐阜県連にとっても、割り切りは簡単ではない。
愛知県連は今年5月ごろ、党本部から協議を要請され、今月、愛知用水の工業用分を上水に振り替えて安定供給することを前提に合意した。
諌早湾干拓問題以来、公共事業批判は同党の看板政策。しかし、地方と中央は食い違いを指摘されてきた。
愛知県連関係者は「これで河口堰のずれは解消できた」とほっと胸をなでおろす。だが、堰を選挙区に抱える岡田克也政調会長は「開放には相当コストがかかる。全面開放は疑問だ」と今も話す。
今回の決定には、「独自性を示し、無党派の支持を取り戻したい」との思惑も見える。しかし、全面開放がどれだけ「目玉」になるか。
三重県連の幹部は「寄り合い所帯の民主党の悪いところ。いつも判断が遅い」と渋い表情だ。
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