長良川河口堰給水の受水先送りを正式決定 北勢10市町【名古屋】

朝日新聞  2001.07.07 名古屋朝刊 36頁 2社 (全177字)
 長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市、長島町)の上水道水の受水延期問題で、三重県北勢地方の10市町は6日、受水部会を開き、06年度の受水開始を見送ることを正式に決めた。10市町は4〜7年の先送りを要求しており、今後、給水する県企業庁と協議し、受水開始時期を決め直す。
 県側もこの方針を受け入れ、基幹施設の山村浄水場(四日市市)の来年度着工方針を見直す考えだ。


河口ぜき受水開始時期を検討 計画見通し不透明に
 北勢の10市町 『事業の必要性は不変』   
      
                        
中日新聞 朝刊 20010707 三重版     020頁 0387字 24
 【三重県】長良川河口ぜきから水道水を平成十八年度から受水する計画の四日市市など北勢十市町が六日、受水開始時期を今後一年かけて検討していくことを決めたことで、計画の見通しは不透明になった。この日の「北勢広域水道事業促進協議会」の長良川系受水部会の会合で、十市町は▽先送りを要望するが、事業の必要性は変わらないこと▽景気低迷などによる一時的な水需要の落ち込みだけから、受水
の開始時期を判断すべきでないこと−などを確認した。
 十市町は当面、受水開始時期を設定せずに先送りを県にあらためて要望し、受水に必要な施設工事の今後の進め方について、県と協議していくことにした。
 「北勢広域水道事業促進協議会」の事務局を務める四日市市水道局の野呂修局長は「会合の結果は、来週はじめにも県に伝える。(今回の決定で)四年から七年という受水開始時期の先送りの数字がまったく消えたわけではない」と話した。


危機管理上必要と判断 / 需要が伸び悩み 先送りや凍結も  
長良川河口堰からの受水  料金値上げは必至


伊勢新聞 01/07/16
 長良川河口堰(ぜき)から北勢地方に飲み水を供給する「北中勢水道用水供給事業(北勢系)」。景気低迷もあって水需要が伸びず、全部給水の先送りがほぼ確定的になっている。しかし、関係市町は危機管理の観点から「受水は必要」と
の考えを崩していない。(特報部 岡 正勝)

  ■軌道修正
 亀山市の田中亮太市長は五月、河口堰の水を「当初の計画通りには利用しない」と表明した。地下水調査で「十分な水量が確保できる」ことが分かったためだった。事業からの離脱を決めたわけではなかったが、軌道修正を余儀なくされた。
 平成十七年度の水需要を三万七千三百dと見込み、十八年度から日量二千六百dの受水を申し込んでいる。「離脱するか、しないかは市議会や市民らと話し合って決めたい」。発表から約二カ月が経過したが、まだ動きは見られない。
 受水の検討段階での地下水調査は他市町では「当たり前」(県企業庁)だが、亀山市は申し込んだ九年六月にそれを「していなかった」という。今度も河口堰からの受水に反対する市民グループに促されて実施した。新たに約四万dの水が揚水可能とされた。
 「十市町がまとまって決めたわけだし、それぞれの市町と県企業庁との協定書もある。調査もしていなかったのに万が一にも『計画から抜ける』って言われても、みんな納得しないわな」。他のある自治体担当者は、吐き捨てるように話した。
 
 ■受水延期
 河口堰からの受水は、北勢四市六町の要望に基づき、県企業庁が平成十年度に事業着手した。浄水場整備など全体事業費は三百七十四億一千万円。平成十八年度に日量四万七千六百dの全部給水を始める予定だった。
 しかし、景気の低迷などで水需要が思うように伸びず、関係自治体でつくる北勢広域水道事業促進協議会の受水部会は六日、先送り時期を絞らないまま全部給水見送り要望を決めた。今週中にも県企業庁へ報告される見通しだが、同庁は基本的に受け入れる考えだ。
 一方で、桑名郡木曽岬町、長島町、三重郡川越町、朝日町、楠町の五町はことし四月から、合わせて日量六千四百dの受水を始めた。費用を軽減するため、既存の播磨浄水場(桑名市)を拡張、木曽川からの工業用水の送水管を使った。
 このうち、楠町の「責任水量」(同町)は日量七百d。木曽川と同じ受水計であるため、長良川の水をどれだけ利用しているかは分からないという。ただ、町全体の水需要は「ここ数年、横ばい」。受水開始前も、水が不足することはなかった。
 津市や久居市、一志郡嬉野町など中勢十一市町への同水道用水供給事業(中勢系)については、すでに一昨年二月から二期計画が凍結されている。

  ■公共事業

利水も建設要因に挙げられた河口堰の河川敷で七日、NGO主催の公共事業の在り方を考える集会が“脱ダム宣言で知られる”田中康夫・長野県知事も出席し開催された。桑名市の秋田清音・赤須賀漁協組合長は「三重は水が余っているという…。われわれがあの時流した涙は何だったんだ」と語った。
 水需要が伸びないことについて、四日市市は「横ばいは事実だが、企業が四日市に立地してくれるとなった場合、水が欲しいと言われてもすぐには対応できない。水源の多重化など危機管理の面でもやはり受水は必要」と話す。他の幾つかの自治体も似た考えだ。
 実際、中勢でバブル期、水を供給できないことを理由に「大開発や住宅開発を許可できなかったこともあった」(県企業庁)という。しかし現状は、今後「右肩上がりの成長は見込めない」とされているばかりか、現時点で「景気は悪化している」と国が言っている。
 そんな中で受水後、各市町の水道料金値上げが必至とされる河口堰の水を「備えあれば憂いなし」と住民は考えられるだろうか


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