「長良川河口堰運用の現状を評価する」(宮野)資料


(表1-1)長良川河口堰のCBA(建設省(現国交省))
(1965年『中間報告(その2)』の方法)
長良川河口堰の便益/費用の算定

治水 利水
@年便益 192,000 1,935,680
年平均被害軽減額 年収入
(農産物の塩害による減収軽減) (開発水量×原水単価3円/〜)
A年費用 0 50,000
(計上されていない) (維持管理費)
B年純便益(@-A) 192,000 1,885,680
C妥当投資額 2,455,243 19,774,950
(@-A)÷資本還元率 (資本還元率=0.0782) (資本還元率=0.0835、建設利息控除=1.142)


1)長良川河口堰の治水妥当投資額(新制度の便益総額に相当)の算定に用いている資本還元率
(65年当時)は、灌漑の資本還元率=(利子率0.06+減価償却率0.0182)=0.0782である。
塩害対策を含む不特定灌漑は治水目的に含まれるが、灌漑の率を使うとされていた。このため、
堰の治水目的は塩害対策であることが分かる。実際に、洪水調節(ダム)の率は0.0625であり、
この点でも、長良川河口堰の治水目的は洪水防御でないことを証明している。
2)*利水の資本還元率=(利子率0.071+減価償却率0.0125)=0.0835である。また建設
利息控除(1+0.4×建設期間5年×利子率0.071=1.142)をおこない、利水妥当投資額=
(年便益-年費用)/{(利水の資本還元率0.0835)×(建設利息控除1.142)}で算出している。

(表1-2)CBAと長良川河口堰事業費負担の配分(アロケーション)
建設省(現国交省)の1965年の方法
(単位/百万円)

(単位/百万円) 治水 利水
@身替わり建設費 12,300 12,300 24,600
A妥当投資額 2,455 19,775 22,230
B(@Aの内小さい方) 2,455 12,300 14,755
C:Bの率(÷計) 16.6% 83.4% 100.0%
D共同費負担額= 2,042 10,258 12,300
C×事業費123億円


@身替り建設費は、治水単独目的の堰、利水単独目的の堰を建設した場合の各建設費である。
A妥当投資額は、年純便益をもとに算出された投資可能限度額であり、新制度での総便益額に対応する(ただし旧制度で
は、厳密には、堰の耐用年数期間の各年純便益を現在価値に割引いて、耐用年数期間中の総額を求めたものではない。)
D共同費は、治水・利水の多目的河口堰としての建設費を表しており、123億円である(Dの計の欄)。
建設省中部地方建設局・木曽川工事事務局『長良川河口堰調査中間報告書(その2)』1965年6月、261ページの表に
一部注記を加え作成。

(表1-3)CBAと長良川河口堰事業費負担の配分(アロケーション)(その2)
建設省(現国交省)による方法の変更(235億円ベース)

(単位/百万円) 治水 利水
@身替わり建設費 17,600 23,500 41,100
A妥当投資額 記載なし 記載なし 記載なし
B(@Aの内小さい方) (Aの記載がないため17,600) (Aの記載がないため23,500) 記載なし
C分離費用 0 5,900 5,900
D残余便益(B-C) 17,600 17,600 35,200
E同上率(D÷Dの計) 50.0% 50.0% 100.0%
FEの%で残余共同費(= 8,800 8,800 17,600
*共同費-C分離費用)配分
G分担額(C+F) 8,800 14,700 *23,500
H同上率=G/(Gの計) 37.4% 62.6% 100.0%


*共同費は、治水・利水の多目的河口堰としての建設費を表しており、235億円である(Gの計の欄)。
F残余共同費=共同費(長良川河口堰事業費)235億円-分離費用59億円=176億円である。なお、分離費用は、利水
部門が長良川河口堰事業に参加することによる費用増加分(増分費用)である。
建設省(現国交省)の公開情報では、便益計算がまったく欠落しており、したがって、公開されたアロケーション表でも
妥当投資額の欄が設けられていなかった。本表は、妥当投資額欄Aを含めて、通常の形式では掲載している欄を含めて
補足した。ABの欄および注記や番号の修正を除けば、建設省(現国交省)の表のとおりである。

(表2ー1)長良川の環境改善(再生)への支払い意思額(年額):合計・地域

合計 八幡町 岐阜市 長島町
@WTP回答者数:(世帯数) 255 82 134 39
AWTP回答者世帯の家族人数:(人) 928 340 441 148
B(拒否回答者+WTP回答者)の世帯数 *271 87 139 44
C(拒否回答者世帯+WTP回答者世帯)の家族数(人) *979 352 449 177
D各市町人口(人) 441,033 16,827 408,507 15,699
EWTP回答者支払い意思額合計(万円) 193.78 61.68 104.80 27.30
F1人当り平均支払い意思額(補整前)=E÷A(万円) 0.181397 0.237642 0.184459
G1人当り平均支払い意思額(補整後)=E÷C(万円) 0.175227 0.233408 0.154237
H1世帯当り平均支払い意思額=E÷B(万円) 0.710345 0.753957 0.620455
I3市町人口での支払い意思額合計(G×D)(万円) 100,718.55 2,948.55 95,348.63 2,421.37

G拒否回答(環境改善に無関心、環境改善は必要だが支払い能力がないと回答)は、WTP=0とみなした。
*地域名不明の拒否回答者(環境改善に賛成だが支払い能力がないためWTP拒否)は1世帯1人あったが、
地域別のWTPの計算では無視した。ただし合計欄のBCには加えたため、3市町の単純合計と一致しない。

(表2-2)長良川の環境価値の試算(1999年価値)

A〜Cは1999年時点での評価額である。四捨五入のため合計が合わない部分がある。

@人口 A1人当りWTP B合計WTP C環境価値評価額* D環境価値評価額**
(万人) (万円/年) (億円/年) 1999年時点(億円) 1995年現在価値(億円)
(1)長良川流域 89.6512 @岐阜市=0.233408 17.57 439 430
A岐阜市以外=0.164732
(2)東海地域(流域外) 1,009.35 0.164732〜0.233408 166.27〜235.59 4,157〜5,890 4,068〜5,763
(3)東海合計(1+2) 1,099.0 183.85〜253.16 4,596〜6,329 4,497〜6,193
(4)東海地域以外の全国 10,470.60 0.105429〜0.217069 1,103.90〜2,272.84 27,598〜56,821 27,004〜55,598
(5)全国合計(3+4) 11,569.60 1,287.75〜2,526.00 32,194〜63,150 31,501〜61,791

*環境評価額は、割引率を0.04として、WTP合計÷0.04で求めた(割引率は日本の公共事業の総便益算定で用られる率を参考にした)。
**消費者物価指数を用いて95年現在の価格に補整した(1999年評価額の1995年価格表示額=1999年評価額×(1995年指数=100)/(1999年指数=102.2)。
(1)長良川流域は、@岐阜市=岐阜市1人当りWTP額×人口、A岐阜市以外=八幡町・長島町の1人当りWTP額平均(※)×岐阜市以外の流域人口、を合計した。
※の平均額は、八幡町WTP額0.175227万円/年、と長島町WTP額0.154237万円/年の単純平均である。
(2)東海地域(流域外)は、(八幡町・長島町の1人当りWTP平均値〜岐阜市1人当りWTP)×流域以外人口で求めた。
(4)東海地域以外の全国は、八幡町・長島町の1人当りWTP平均値〜岐阜市1人当りWTPに、補整値0.64〜0.93を乗じて求めた。補整値0.93は、エルワ川のCVM
例で、エルワ川流域の郡を除くワシントン州住民のWTP73ドル/世帯と、ワシントン州以外の全国住民のWTP68ドル/世帯との比率である。また、補整値0.64は、
長良川流域と同じ東海地域の藤前干潟のCVM例で、干潟のある名古屋市住民のWTP10,259.6円/世帯と、その他全国住民のWTP6,554.9円/世帯との比率である。

(参考):長良川河口堰による環境被害と対策の必要性に関する認識(人)

全体 八幡町 岐阜市 長島町
A被害は深刻だが対策の対策が緊急に必要 377(82.0%) 118(84.9%) 192(87.3%) 66(66.7%)
A被害は深刻だが対策は不必要 27(5.9%) 7(5.0%) 11(5.0%) 9(9.1%)
B被害は深刻ではない 18(3.9%) 2(1.4%) 6(2.7%) 9(9.1%)
Cなんとも思わない 8(1.7%) 1(0.7%) 2(0.9%) 5(5.1%)
Dその他 21(4.6%) 7(5.0%) 6(2.7%) 8(8.1%)
E無回答 9(2.0%) 4(2.9%) 3(1.4%) 2(2.0%)
F合計 460(100%) 139(100%) 220(100%) 99(100%)


(表3ー1)ゲート開放の賛否(環境政策と水資源・塩害対策の優先序列)

岐阜市 八幡町 長島町 3市町全体
開放に賛成 開放に反対 無回答 合計 開放に賛成 開放に反対 無回答 合計 開放に賛成 開放に反対 無回答 合計 開放に賛成 開放に反対 無回答 合計
@塩害も利水もない場合 202 8 10 220 128 7 4 139 84 9 6 99 415 24 21 460
92% 4% 5% 100% 92% 5% 3% 100% 85% 9% 6% 100% 90% 5% 5% 100%
A塩害が起こる場合 150 46 24 220 106 27 6 139 63 30 6 99 320 104 36 460
68% 21% 11% 100% 76% 19% 4% 100% 64% 30% 6% 100% 70% 23% 8% 100%
B水不足が生じる場合 146 52 22 220 92 38 9 139 51 41 7 99 289 132 39 460
66% 24% 10% 100% 66% 27% 6% 100% 52% 41% 7% 100% 63% 29% 8% 100%
C塩害・水不足が生じる場合 142 56 22 220 87 43 9 139 49 44 6 99 279 144 37 460
65% 25% 10% 100% 63% 31% 6% 100% 49% 44% 6% 100% 61% 31% 8% 100%

(注)全体には市町名不明者2名も含むため、3市町の単純合計とは一致しない。

(表3-2)塩害・河口堰認識(@?D)と、ゲート開放の賛否(ー塩害・利水の有無の各場合(A?D)の賛否の変化ー)

(3市町合計)

塩害・利水の有無 A:塩害・利水がない場合 B:塩害が発生する場合 C:水不足が発生する場合 D:塩害・水不足発生の場合
塩害・河口堰認識 賛成 反対 無回答 賛成 反対 無回答 賛成 反対 無回答 賛成 反対 無回答
@塩害があると大変なので河口堰 30 7 5 42 6 31 5 42 4 32 6 42 2 34 6 42
を作ってよかった 71% 17% 12% 100% 14% 74% 12% 100% 10% 76% 14% 100% 5% 81% 14% 100%
A塩害が起こっても別の対応があ 190 8 3 201 147 40 14 201 130 57 14 201 123 64 14 201
ったのではないか 95% 4% 1% 100% 73% 20% 7% 100% 65% 28% 7% 100% 61% 32% 7% 100%
B塩害はないか、あるいは起こっ 149 5 2 156 140 13 3 156 132 21 3 156 132 22 2 156
ていないので河口堰は不要である 96% 3% 1% 100% 90% 8% 2% 100% 85% 13% 2% 100% 85% 14% 1% 100%
Cその他 29 1 1 31 14 11 6 31 13 12 6 31 13 12 6 31
94% 3% 3% 100% 45% 35% 19% 100% 42% 39% 19% 100% 42% 39% 19% 100%
D無回答 17 3 10 30 13 9 8 30 10 10 10 30 9 12 9 30
57% 10% 33% 100% 43% 30% 27% 100% 33% 33% 33% 100% 30% 40% 30% 100%
E合計 415 24 21 460 320 104 36 460 289 132 39 460 279 144 37 460
90% 5% 5% 100% 70% 23% 8% 100% 63% 29% 8% 100% 61% 31% 8% 100%

(表3-3)塩害・河口堰認識と法案の賛否

(全体・地域別)

八幡町 岐阜市 長島町 3市町合計(全体)
法案賛成 法案反対 合計 法案賛成 法案反対 合計 法案賛成 法案反対 合計 法案賛成 法案反対 合計
@塩害があると大変なので河口堰 3 6 9 12 3 15 5 12 17 20 22 42
を作ってよかった 4% 11% 6% 9% 3% 7% 13% 20% 17% 8% 11% 9%
A塩害が起こっても別の対応があ 40 26 66 62 41 103 16 16 32 118 83 201
ったのではないか 49% 46% 47% 46% 48% 47% 41% 27% 32% 46% 40% 44%
B塩害はないか、あるいは起こっ 30 13 43 48 29 77 17 18 35 95 61 156
ていないので河口堰は不要である 37% 23% 31% 36% 34% 35% 44% 30% 35% 37% 30% 34%
Cその他 4 5 9 6 8 14 0 8 8 10 21 31
5% 9% 6% 4% 9% 6% 0% 13% 8% 4% 10% 7%
D無回答 5 7 12 6 5 11 1 6 7 12 18 30
6% 12% 9% 4% 6% 5% 3% 10% 7% 5% 9% 7%
E合計 82 57 139 134 86 220 39 60 99 255 205 460
100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 100%


(表3-4)法案賛否とゲート開放(環境政策・水資源政策・塩害対策の優先序列)
:地域別
(岐阜市)

(1)法案賛成者 (2)法案反対者
1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計 1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計
@塩害も利水も 127 2 5 134 75 6 5 86
ない場合 95% 1% 4% 100% 87% 7% 6% 100%
A塩害が起こる 98 24 12 134 52 22 12 86
場合 73% 18% 9% 100% 60% 26% 14% 100%
B水不足が生じ 94 29 11 134 52 23 11 86
る場合 70% 22% 8% 100% 60% 27% 13% 100%
C塩害・水不足 92 31 11 134 50 25 11 86
が生じる場合 69% 23% 8% 100% 58% 29% 13% 100%



(八幡町)

(1)法案賛成者 (2)法案反対者
1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計 1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計
@塩害も利水も 77 3 2 82 51 4 2 57
ない場合 94% 4% 2% 100% 89% 7% 4% 100%
A塩害が起こる 67 12 3 82 39 15 3 57
場合 82% 15% 4% 100% 68% 26% 5% 100%
B水不足が生じ 63 16 3 82 29 22 6 57
る場合 77% 20% 4% 100% 51% 39% 11% 100%
C塩害・水不足 60 19 3 82 27 24 6 57
が生じる場合 73% 23% 4% 100% 47% 42% 11% 100%



(長島町)

(1)法案賛成者 (2)法案反対者
1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計 1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計
@塩害も利水も 35 1 3 39 49 8 3 60
ない場合 90% 3% 8% 100% 82% 13% 5% 100%
A塩害が起こる 31 6 2 39 32 24 4 60
場合 79% 15% 5% 100% 53% 40% 7% 100%
B水不足が生じ 26 11 2 39 25 30 5 60
る場合 67% 28% 5% 100% 42% 50% 8% 100%
C塩害・水不足 25 12 2 39 24 32 4 60
が生じる場合 64% 31% 5% 100% 40% 53% 7% 100%




(表3-5)法案賛否とゲート開放(環境政策・水資源政策・塩害対策の優先序列)
:全体

(1)法案賛成者 (2)法案反対者
1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計 1)開放に賛成 2)開放に反対 3)無回答 4)合計
@塩害も利水も 239 6 10 255 176 18 11 205
ない場合 94% 2% 4% 100% 86% 9% 5% 100%
A塩害が起こる 196 42 17 255 124 62 19 205
場合 77% 16% 7% 100% 60% 30% 9% 100%
B水不足が生じ 183 56 16 255 106 76 23 205
る場合 72% 22% 6% 100% 52% 37% 11% 100%
C塩害・水不足 177 62 16 255 102 82 21 205
が生じる場合 69% 24% 6% 100% 50% 40% 10% 100%



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