使う当てのない河口堰の水・三重県の場合
2002.6.19作製 長島町 大森 恵


長良川河口堰は「塩害を防ぎ川底しゅんせつを可能とする治水のダム」として喧伝されて建設、完成したが、もともとは利水計画のダムであり、河口堰建設費は利水自治体(三重県、愛知県、名古屋市)によって支払われているが、完成後七年を経ても水利用が生じない。
(愛知県は、木曽川水源の知多半島を全量河口堰水源に強制切り替え。水質が悪いため知多浄水場では浄化悪臭対策に多額費用投入。名古屋市は償還金のみ支払い中)
建設前から水需要がないことはわかっていたのに、いとも安易に支配下の各市町村に水道契約量を押付けていた三重県企業庁はいま手痛い反撃に立ち往生の体である。

三重県企業庁の長良川河口堰の導水計画
中勢用水 日量83,584?  給水開始予定2005年4月1日(津 久居 一志 嬉野 三雲 白山 河芸 芸濃 安濃 美里2市7町1村)北勢用水 日量47,600?  給水開始予定2006年4月1日(桑名 四日市 鈴鹿 亀山 木曾岬 長島 朝日 川越 楠 菰野4市6町)工業用水 日量550,000?使う当てのない水合計   日量681,184?

使う当てのない河口堰の水・中勢用水の場合
1993年から第一期の導水事業建設が始まり1998年4月から日量58,800?を供給開始した。これらの市町村では供給の負担に備えて1994年から1998年にかけて2割から4割の水道料金の値上げを実施した。しかし水需要は増加せず逆に水道会計の赤字が増大するので、津市では2001年4月に更に3割の再値上げを行い、他市町村では赤字負担に耐えているのが現状である。
津市では、一日あたり28,000?の契約水量を引き受けたが、もともと125,000?の自己水源があり、1999年夏の「最大給水量(平均給水量に60%を掛けてあらわす。実際の使用水量ではない)」でも120,000?にすぎなかったので、水は十分足りていた。
津市は日量28,000?の契約量のうち、料金を支払う「責任水量」は5,500?にまけてもらっていたが、それでも水道会計は悪化していた。
中勢用水の関係自治体で作る「中勢地区広域的水道整備連絡協議会」では受水責任量の引き下げをたびたび要請して苦しい現状を企業庁に訴えた。
県企業庁では「現在の水需要で導水工事を進めては過剰供給に陥る」と判断し、2001年5月に第二期工事を中止し延期としたのである。
これが中勢用水の現状であり、第一期分の58,800?は使われておらず、第二期工事の再開も延期のままである。

使う当てのない水・北勢用水の場合
北勢地方の鈴鹿山岳を持つ鈴鹿市、四日市市は涵養された豊富な地下水を持ち、自己水源だけで十分自足していた。海岸部の木曾岬町、長島町、川越町、楠町でダム水源が必要とされていて、1977年4月に木曽川岩屋ダムが完成し北勢広域水道として、桑名市、四日市
市、鈴鹿市など3市5町に供給が開始された。
1988年には、員弁川系の渓流水を集めて三重用水ダムが建設され、四日市市、鈴鹿市、菰野町に供給されることになった。
木曽川岩屋ダム、三重用水ともに供給量の約半量しか使用していない。
特に四日市市、鈴鹿市、桑名市など都市部において必要量を無視した多量の契約水量を、将来の人口増を推計させて受け入れさせた。その推計の誤りが現在にいたって、この二つのダムだけで大量の余剰を発生させている現状である。
 
既存ダムの余剰
木曽川岩屋ダム 給水能力80,300?日量 使用平均日量40,600? 余剰約2分の一        桑名市の余剰15,400  四日市の余剰15,100 鈴鹿市の余剰4,400三重用水    給水能力51,000?日量 使用平均日量30,900? 余剰40%        四日市の余剰17,000  鈴鹿市の余剰2,200 菰野町の余剰1,000
余剰を合計すれば供給量131,300?の約2分の1が余剰であり、海岸部が不足している分はこの余剰分で十分まかなえる。
したがって、長良川河口堰の供給量47,600?はまったく不要であるというのが、私大森の検証である。(この数字のもとになる企業庁の給水実績はあります)
全量余剰ダム長良川河口堰長良川河口堰給水能力日量47,600?対象市町と給水契約量桑名市2,500四日市市10,000鈴鹿市13,000亀山市2,600木曾岬2,700長島4,000朝日2,200川越3,600楠3,000菰野4,000 

長良川河口堰からの受水はできない
長良川河口堰を水源とする水道水の供給を契約している10市町は、2001年7月6日「北勢広域水道事業促進協議会」を開き、2006年から予定している河口堰からの受水を先送りすると決めた。先送りの年数については今後検討することとした。
そして秘密に先送り年を決めていたのが、今回鈴鹿市議の情報公開要求で開示され明らかになった。(5月27日)
開示によれば関係自治体でつくる「北中勢水道用水供給事業受水部会」の資料で需要不足のため受水開始年度を2011年度とするとしていた。
2011年度とはいかなる年か。2005年からわが国は人口減に転じ、2010年度には総人口一億人割れにむかって急速に減っていく予想である。
2011年度に、余剰水源60,000?を全部使い切り新たに河口堰水の使用を始めるとは夢物語である。
夢物語のために中勢用水道工事754億円北勢用水道工事374億円合計1,128億円の工事費を使いその償還をすべて水道料金に乗せてこようなど、無茶な話は止めてもらいたい。

水道用水のほかに河口堰工業用水の問題は、予想も方向も見つからない。
三重県企業庁には日量55万トンの工業用水の権利もある。
水道用水と工業用水合わせて27億円余りを毎年、水資源公団に払っている。市町村からの収入は、むりに結ばせた第一期分の契約量からの収入1億6千5百万円のみで、企業庁は一般会計からの繰り入れや起債などでまかなっている。(借金を返すために借金をする!)
北川知事が衆議院議員であったころ、河口堰反対運動が起こったが、北川議員は強面の推進論者で「河口堰は三重県に必要欠くべからざるもの」と大声で、にらみつけるように、長島町で演説したものである。
その北川知事が10年後の今では「河口堰は『負の遺産である』解決方法を若手職員の発想にまかせる」といっている。



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