「奪われし未来」シーア・コルボーン、ダイアン・ダマノスキ他著  翔泳社・1800円


 科学が飛躍的に発達した今世紀は、地球環境が激変した。本書は、ダイオキシンやPCBなどの合成化学物質が過去半世紀の間に、食品添加物や肥料、薬品や廃棄物、時に化学兵器として大量にばらまかれ、それが人間のみならず地球の生態系システムにいかに有害に作用したかを描く。
 その結果、子供を産み育てなくなった動物、激減する人間の精子などが報告され、性機能や生殖や分泌系の異常に力点が置かれている。つまり現代だけでなく、子孫が生きる未来へ向ける警告が、科学的データや観察記録に基づき発せられているのだ。科学の書だが専門的でない。それは自然保護に従事する著者たちの手腕によるもので、描写はスリリングなドキュメントのように工夫され、一気に読める。
 進歩や文明の発展が、ともすれ人間のデタラメな欲望の産物でしかないことを知覚しているニューエイジの共感と、その文明の上で生きるしかない現代人の不安を巧みにとらえ、昨年9月発売で現在4刷り5万部。長尾力訳。
 


| ホームへ戻る | 関連図書・ビデオへ |