VOL.25-1


「私たちの手で政治を変えよう」
長良川河口堰建設に反対する会 事務局長 天野礼子

   昨年6月にオランダのハーリングフリート河口堰を訪問し、12月にはその管理者スタン・カークホフスさんを国際シンポジウムに招いたが、今年4月1日〜5日に私は、長良川のサツキマスの長良川漁協と共にハーリングフリート河口堰を再訪した。

 7月6日に運用6年となる長良川河口堰と、間もなく運用4年を迎える諫早水門を、一日も早く開放したいと考えるからだ。
このネットワークには、国際シンポ時のカークホフス氏とシュイジ氏のスピーチを載せているが、今回私がオランダを再訪した際にカークホフス氏は、「私達が、全門開放を選べないのは、30年間も閉めていたので一気に開けると7メートルものヘドロが影響を与えることと、費用がかかりすぎるため。しかし、長良川は6年、諫早は4年、だから私達とは異なる選択ができると思う」といった。

 また私は、デルタ計画全体の政府の生態学者にも話を聞くことができた。この人から新たに次のことを教えられた。

1)治水に良かれと考えて、ハーリングフリートを含む4つの河口堰などのデルタ計画を実行したが、上流からの堆積(ヘドロ)が科学的に危険なものとなったこと、治水上は堰を閉めることがかえってよくなかったことがわかった。

2)1970年にハーリングフリート河口堰を閉めて水質が悪化し、ヘドロが大量にたまったため、それ以降に完成した水門は閉めずに開けておくことになり、高潮が来た時にだけ閉める運用となった。

3)水質汚濁には、潮を入れてやることが一番の解決法であることが東スヘルデ湾では明らかとなった。

4)これによって我々は教訓を得た。「川の出口にとって、淡水だけというのは水質に悪く、塩水が入ることが良い。“汽水域”とは、神が造られた浄化装置だった」  

ところで。ネットワークが資金不足で出せない間に、世の中はずいぶん動いた。  田中長野県知事が、2月20日に“脱ダム”宣言。その手法をマスコミは批判したが、むしろ注目すべきは、“田中ちゃん”が、公共事業のシステムにずばり切り込むためにダムを選び、「地方が求め」、「中央がバラまいてきた」公共事業が、日本の財政をここまで貧困にしたことを指摘したことであろう。  

そして。自民党が総裁選をオープンで行い、4人の中で1人だけ「210世紀の開発」を問うていた小泉氏が圧倒的勝利をし、89%の国民の支持率を得るに至った。マスコミは書かないが、私はこれを“田中ちゃん”効果だと確信している。
 私たち長良川が世に広めてきた欧米の変革、「不必要な事業をやめ、必要な事業に金をまわすこと」が、今の日本には一番大切であることを、国民の多くがもうわかり始めたと見るべきなのだ。栃木でも千葉でも、それが大きな風となったのだ。

 建設省河川局でさえ、その風には抵抗できない。私たちの国際シンポの翌日12月18日には、朝日新聞が全国版で、翌日、河川審議会が「これからは、“あふれてもよい治水”を提言する」ことをスクープした(私はこれを河川局のリークと考えていて、勝手に、私達へのプレゼントだと解釈している)。

 さあ。世の中はこれからどうころぶか。わかっていることは、世界の潮流に、もはや河川局(今は国土交通省)は逆行できないということだ。(それでも河川局は、2003年に日本で主催する“世界水フォーラム”で、「21世紀は水争いの世紀。だからやっぱりダムは必要」とやるつもりなのだ。)

 小泉氏は確かに「マイナス成長も覚悟して“財政改革”を」というが、一匹狼の時は言っていた「不必要な公共事業をやめよ」は総理になると言わなくなり、代わりに「首相公選」や「憲法改正(?)」など、とくに急ぐ必要もないことを声高に言い始めた。危ない。危ない。

 私達は今こそ、自分で目を見張り、耳をすまそう。下記は、民主党代表の鳩山由起夫さんが五十嵐さんの著書『公共事業は止まるか』のために対談されたものを、岩波書店の許可を得てまとめ直したものである。鳩山さんを、皆さ ん自身が審判してみてほしい。

 7月7日、8日には、田中康夫長野県知事が“長良川DAY”に2日間出席する。“脱ダム”に賛同する人は、大挙してここへ集合してほしい。もちろん雨天決行!  そして7月29日の選挙時には、あの自民党員たちでさえやったことを、私達も全国で実行しよう。自分達のための政治体制を、自分達で作り上げるのだ。

 “長良川”はその日のために、“田中康夫”を“長良川DAY”のゲストに迎える。


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