初心者のための長良川河口堰問題 Q&A
より詳しい説明やデータなどは資料集「長良川河口堰運用の被害は軽微にあらず」「サツキマスが還る日」「巨大な愚行 長良川河口堰」をご覧下さい。また日本自然保護協会からも「長良川河口堰が自然環境に与えた影響」と 「河口堰が生態系に与えた影響と河口域の保全」が発行されています。
治水について
Q. 平成12年9月12日の出水について長良川河口堰に伴う浚渫(しゅんせつ・川底の土砂を取り除くこと)による水位低下効果は約1.1mと建設省は発表しています。長良川河口堰は治水に役に立つのでは?
A. 水位低下はしゅんせつにより生じたもので、長良川河口堰自体は水路の12%を占める川の流れを妨げる構造物です。また、しゅんせつによって水位の低下した地区は、もともと水面から堤防の上端までの幅が十分にあるのに対し、水面と堤防の上端との差が少ない地区ではしゅんせつの効果がなく、堤防のかさ上げ工事をしています。
塩害について
Q. しゅんせつをすると塩水が河口から約30km付近までそ上すると予測され、その区間で取水している各種用水に塩水が混入したり、地下水や土壌が塩分で汚染されるなど塩害の恐れがあるので長良川河口堰によって塩水の遡上を防ぐのだ、と建設省は主張していますが?
A. 長島町の塩害は木曽川の馬飼頭首工からの導水で解消しています。仮に上流の高須輪中で塩害が起きるという、ありえない仮定にたっても、長良川河口堰の建設費は、被害金額の10000年分以上にあたります。
水需要について
Q. 木曽川水系の水資源開発基本計画によると、2000年には、121立方メートル/秒の都市用水が必要になると見込まれていて、昭和60年までに完成した施設では、この計画に対してまだ20立方メートル/秒不足していると建設省のホームページにでていますが?
A. 木曽川水系の都市用水の使用実績は580万トン/日(約67立方メートル/秒)ですが、長良川河口堰を除いても約810万トン/日(約94立方メートル/秒)の水源が確保されていて、長良川河口堰の水は不要な状態にあります。わかりやすいグラフがあります。
渇水について
Q. 平成6年夏の渇水では、愛知用水地域で水道の断水等により市民生活に大きな影響が出ました。 さらに、工業用水の大幅な節水により、本地域の約300事業所において生産調整・生産ラインの停止などが行われました。 渇水時には長良川河口堰が役に立つのでは?
A. 木曽川上流のダムがカラになったのは、ダム放流をしたからです。下流への放流を圧縮すれば断水はなかったでしょう。また、水を作っているのは森林であり、ダムの役割はその20ないし30%に過ぎません。渇水対策として、最も重要な政策は健全な森林の育成です。異常渇水に対しても、巨額の税金投入と壮大なる環境破壊を行わなくても、「都市用水と農業用水の弾力的活用」という人間の知恵一つで、対応できます。さらに地下水を都市の足元の自己水源として見直し、活用する準備をしていく事も大切です。詳しくは「緑のダム構想」を参照ください。
知多導水について
Q. 長良川河口堰の水は、知多半島や三重県中勢地域まで送られていると聞きましたが?
A. 知多4市5町の都市用水の使用量は20万トン/日ですが、それまで取水していた馬飼頭首工の供給能力には60万トン/日以上の余裕があります。三重県でも水は余っており、不要で高価でかつ水質に問題がある水を押し売りされたとして、長良川河口堰の水が来ている地域でも反対運動が起きています。
水道財政について
Q. 名古屋市では水道料金が値上げになると聞きましたが、長良川河口堰の運用と関係がありますか?
A. 名古屋市は長良川河口堰からの水を使用していませんが、利水に関わる建設費の一部を負担しています。そのお金は、水道料金の中から返していかなくてはなりません。水道料金が高くなったのはそのためでしょう。愛知県、三重県では長良川河口堰からの水の引き取り手が少なく、特に工業用水はまったく売れないので、水道事業の会計から建設費を償還することができません。
住民訴訟について
Q. 長良川河口堰住民訴訟とはどのようなものですか?
A. 長良川河口堰の水が売れないので、愛知県や三重県は建設費を返すことができません。そこで、一般会計から建設費を返そうとしていますが、それは違法であると住民から訴えられているのです。
地元の要望について
Q. 地元の議会では長良川河口堰のゲートを上げるのに反対という決議がされているそうですが?
A. 地元住民へのアンケート調査では反対や一時中止を求める声が、岐阜市で89%、長島町で74%もありました。議会は塩害を口実としてゲートの引き上げに反対していますが、両県とも塩害対策は完全です。ゲートを上げても何も問題が生じないとなると、長良川河口堰に投資したお金の回収ができなくなるから反対しているのでしょうか。
アユについて
Q. 2000年8月の岐阜県の広報によると、今年のアユのそ上は平年並みと考えられるとありました。長良川河口堰のアユへの影響はないのですか?
A. 長良川河口堰運用前の調査が行われてないのに、なぜ平年並みと考えられるのか不思議ですね。2000年1月に実施された長良川漁協(岐阜市)と長良川中央漁協(美濃市)のアンケート結果では、90%以上の川漁師さんが長良川河口堰の運用後、アユのそ上が減少したと答えています。
サツキマスについて
Q. サツキマスもアユと同様、海と川を行き来しますが影響は出ていますか?
A. サツキマスの漁獲高は年々減少しており、建設省の資料でも99年の漁獲高は93年の4分の1しかありませんでした。しかもこの統計は、まだ漁を続けている漁師さんの漁獲量に過ぎません。河口堰運用後に漁をやめてしまった漁師さんたちの漁獲量を考えれば、サツキマスが激減していることは明らかです。また、漁期も運用前は5月いっぱいで終了していたものが、今では6月20日前後にまでなっており、そ上の遅れも明確になっています。
水道水の水質について
Q. 長良川河口堰から取った水道水は、今まで飲んでいた水に比べるとおいしくないようですが?
A. 味のことはともかく、建設省の調査では、長良川河口堰上流の水からは全国で最高濃度の環境ホルモンが検出されているそうです。いろんなものが流れ込んだ最下流の水を飲用水とするのは危険な要素が多すぎます。河口堰(河口のダム)という考え方そのものが、環境ホルモンなどの危険性が明らかにされた今日においては、考え直さなくてはならないものでしょう。
底質について
Q. ダムは土砂でじきに埋まってしまうと聞きますが、長良川河口堰上流には土砂など溜まらないのですか?
A. 建設省のモニタリングでは底泥堆積は認められなかったそうですが、実際には運用後4年で160cmの泥が積もりました。下流部では最大約2メートルものヘドロが積もりました。
シジミについて
Q. 建設省は、「木曾三川のシジミの漁獲高は変わらない」と説明していますが?
A. 長良川河口堰下流ではヤマトシジミは死に絶えました。堰上流では運用後しばらくは放流の増加で漁獲は維持されましたが、年を追うごとに減少し、長良川のシジミ漁は壊滅しました。漁師さんたちは揖斐川と木曽川でこれまでの数倍の労力をかけて漁獲を維持しています。「木曾三川のシジミの漁獲高が変わらない」のはそういう事情です。

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