1.長良川河口堰下流の河床状況および塩分濃度の調査
長良川河口堰の運用によって、堰下流部の物理・化学的環境に大きな変化が生じる可能性が理論的に明らかにされている。
また、河口堰の試験運用中のデータはその正しさを示すものであった。今回、1回ではあるが、
河床の現状および塩分濃度の変化を把握するために調査を行った。
方 法
1996年9月16日に、魚群深知機を用いて河口堰地点から河口までの長良川・揖斐川の河床を調べた。
まず、揖斐川について5.5km地点から川の中央部を河口まで探査し、次に長良川について河口から堰まで、
同様に川の中央部を探査した。また、Okm、3km、4km、5km各地点について河床断面を調査した。
塩分温度については、9月14日の底質調査のさいに採水した試料について分析した。
長良川については2.5km、3km、3.5km、4km、4.5km、5km各地点で、揖斐川については3km、
4km地点でそれぞれ表層水と底層水を採取した。塩分温度は自動滴定装置を用い硝酸銀滴定法により測定した。
結 果
1)魚群探知機による河床の探査結果を図1-4に示す。長良川は河口堰から揖斐長良大橋にかけて水深は
5-6mで河床はほぼ平坦である。これは浚渫がなされた結果であろう。揖斐長良大橋から下流は水深が浅く、
調査時で水深約2-3mであった。揖斐川は、浚渫箇所が少なく、水深は変化に富んでいる。横断面は、
図2、3に示すように、河口地点は砂が堆積して全体に非常に浅い。長良川では、3km、4km、
5km各地点とも水深は5-6mで平坦な河床断面を示す。
2)調査時は大潮後の中潮であったが、揖斐長良大橋から4.5km地点にかけて塩分躍層が見られた(図1)。
また、下流部でも2つの塩分躍層がみられ、塩水クサビの重層約な形成を示した。一方、
揖斐川では塩分躍層は見られなかった(図4)。前前日(大潮)の塩分温度の調査結果を表1に示す。表
から次のような特徴が分かる。(1)長良川では表層と底層で際だった違いが見られる。
その差は10倍以上である。(2)3-4km地点の塩分濃度が下流の2.5km地点の濃度よりもはるかに高い(図5)。
考 察
1)長良川では表層と底層で際だった違いが見られる。その差は10倍以上である。このような違いは、
堰運用前はなかったことで、大潮時には表層と底層の差は普通2倍以内であった。
河口堰運用前に長良川下流域生物相調査団が調査した長良川5.8km地点と揖斐川5.9km地点の塩分濃度を表2に示す。
2)3-4km地点の塩分濃度が下流の2.5km地点の濃度よりもはるかに高い。
このようなはなはだしい逆転現象も堰運用前にはなかったことである。参考のため、図6、7
に堰運用前に長良川下流域生物相調査団が調べた塩分濃度の勾配を例示する。揖斐川の塩分温度が低いことから考えて、
2.5kmより下流の長良川は揖斐川の影響を強く受けていると考えられる。
3)今回、一回限りの調査ではあったが、理論的に予想されていた河口堰下流における恒常的な塩分成層の形成の一端が示されたものと思われる。
今後調査を重ね、いろいろな条件における堰下流の塩分成層形成の様式を明らかにする必要がある。
また、塩分成層と溶存酸素量等との関係についても調査する必要がある。
図1 図2 図3 図4 表1 表2 図5 図6 図7
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