2.長良川河口堰下流のヘドロ堆積調査
芦田川河口堰下流部に大規模なヘドロの堆積がおきていることが知られている。
1995年春に行われた長良川河口堰に関する「円卓会議」では、長良川でも堰が締め切られれば、
堰下流側にヘドロ堆積がおきる可能性が極めて高いことが、試験運用時の建設省データからも明らかになった。
私たちはヘドロ堆積の規模や底生動物への影響を明らかにする目的で、河口堰運用前に1回、
運用後数回にわたって、堰下流側の底質および底生動物の調査を行ってきた。ここでは、
底質について報告する。
方 法
1)堰運用前の1995年5月27日、運用後の8月14日、11月3日、1996年5月6日、7月1日、8月13日、
9月14日にエクマン・バージ採泥器を用いて川底の底質を採取した。また、比較のために、
揖斐川において1995年11月14日、1996年8月14日に河口からOkm、3km、5km地点等で調査を行った。
1995年の調査では、採取泥から平均的に、1996年は注射器で表面から4.5cmまで、約30mlの試料について強熱減量を測定し、
粗度分析を行った。強熱減量は、100°cで48時間乾操後、5OO°cで2時間処理し、その差を求めた。
粒度分析はフルイ法によった。シルト以下の分析は行わなかった。
2)1996年8月14日、9月14日には、堰から揖斐長良大橋間で、重量約10kg、長さ5Ocmあるいは100cmのプラスチック管
(直径36mm)を川底から約1mの高さから垂直に落とし、底質のコアサンプルを採取した。
コアサンプルは層別に強熱減量・粒度測定を行った。ただし、一部は2cmきざみで測定した。
3)1996年11月15日に潜水調査により、3、4、5km地点で長さ1mのプラスチック管を底泥に直接押し込んで底質を採取した。
コアサンプルは2cmきざみで強熱減量・粒度測定を行った。
結 果
1)河口堰運用前の調査では、5.2km地点は礫が少々混じった砂質の箇所が見られた。3km地点
(シラベール=イーナちゃん地点)は礫の中にシルトが混入していた。しかし、1995年11月以降の調査では、
礫はまったく採集されなくなった。
2)1996年9月5日の調査で、河口堰から揖斐長良大橋にかけて、水深5-6mの川底一帯にシルトを主体にし、
植物プランクトンの遺骸を含んだ黒色の軟泥、いわゆるヘドロの堆積が認められた(図8、9)。
堰下(4.5-5.2km地点、左岸魚道の下流)では、水深2-3mの浅瀬でもヘドロの堆積が見られた。また、
人工渚付近(左岸、3.5-4.5km地点)および揖斐長良大橋上流ではヘドロの川底に秒が流れ込んだとみられる複雑な層状構造が見られた。
3)11月の調査は、潜水調査により直接採取を試みた。5km地点ではプラスチック管は1m以上容易に底泥に押し込むことができたが、
底質は約36cmしか採取できなかった。摩擦が大きくなりこれ以上の採取は不可能と考えられる。
底質の分析結果、3km地点、4km地点でシルト主体のヘドロが堆積し、堰下(5.2km地点)は上層でシルトの比率は多少低いものの、
ヘドロが厚く堆積していた(図l0)。
4)揖斐川河口地点では、堰運用前の1995年1月14日、運用後の1996年8月14日とも、ヘドロの堆積が見られた。
3km地点、5km地点は砂地で、変化は認められなかった。
考 察
1)堰直下(5.2km地点)から3km地点までの水深5m前後の河床は、全面的にヘドロが堆積していると推定された。
ヘドロ層の厚さは下流から上流にかけて厚くなり、4.5km地点から5km地点では、左岸の水深2m前後の浅瀬にもヘドロが堆積していた。
2)3.5-4.5km地点で、ヘドロと砂質の層状構造が見られた。ヘドロが堆積した川底に渚造成地から砂が流入して形成された可能性がある。
3)1995年5月には、堰下で礫混じりの底質が採取されたが、1996年8月、9月、11月の調査では、
深さ約30cmまでの底質に礫は見られなかった。この間に、約30cmあるいはそれ以上のヘドロが堆積したと考えられる。
4)堰運用前の1994年に行われた建設省の底質調査では、4km地点より下流側は概ね砂質であったが(図11)、
今回の結果では、2.5-3.0km地点までシルト質が拡大していることが明らかになった。なお、
堰直下のかなりの部分は以前は砂地であり(図11)、今回の結果から判断すれば1m以上のヘドロか堆積したと考えられる。
図8 図9 図10 図11
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