要 約

 1996年7月1日に、長島町住民、漁業者、岐早市住民、長良川下流域生物相調査団のメンバーなどが参加した調査グループが発足し、 長島町役場の援助を受けて、長良川・揖斐川下流の環境調査を行ってきた。調査項目は、 河口堰下流の物理・化学的変化および底生動物相の変化、堰上流湛水域のヨシ原の変化などに限定されたものであり、 また、短期間の調査であったが、次に述べるように、長良川の環境悪化の一端が明瞭に示された。今後、 環境悪化はより進行すると考えられるので、建設省・水資海開発公団のモニタリング調査を注視すると共に、 本グループの調査を継続していくことが重要である。

 1 河口堰下流における流れの停滞と塩分成層の形成

 河口堰下流では、大潮時にも塩分躍層が形成されることが明らかになった。つまり、堰下流では低層は海水、 表層は淡水に近い塩分の水という成層構造が定常的に形成されていることが伺われる。また、 揖斐長良大橋−河口堰間の塩分濃度が揖斐長良大橋より下流よりも高いという結果が得られた。 このことは堰下流の流れの停滞を示唆するものかも知れない。これまで1回の調査を実施しただけなので、 今後詳しい調査を行い、堰下流の物理・化学的変化の実態を明らかにする必要がある。

 2 河口堰下流のヘドロ堆積とヤマトシジミの激減

 河口堰下流側の河口堰-揖斐長良大橋間の長良川ではヘドロの堆稼が進行し、底生動物が激減している。 この水域では、漁業上重要なヤマトシジミは両岸の浅瀬以外はとんど生息できなくなっている。 揖斐長良大橋(2.5km地点)より下流は水深が浅く、砂質の川底である。 ヤマトンジミは1-2.5km地点に生息しているが個体数は減少したと考えられる。 河口付近ではほとんど生息していない。今後、揖斐長良大橋より下流も汝深される予定なので、 堰より下流の長良川ではヤマトンジミは、一部の浅瀬を除きほば全滅する可能性が高い。一方、 揖斐川の川底は砂質を保っており、ヤマトシジミの生息に大きな変化は認められなかった。

 3 堰上流におけるヨシ原の衰退と沈水性水草の繁茂

 河口堰上流部湛水域において、水深1m前後のヨシは大部分が死滅した。水深60-70cm前後では、 密度が低下し、勢いも衰えた。今後、ヨシ原はさらに死滅・衰退していくと考えられる。 一方これまでに見られなかったエビモ、オオカナダモ、 コカナダモなどの沈水性水草が少なくとも伊勢大橋-名神高速道間の水深約1.5mまでの両岸浅瀬に繁茂し始めた。 伊勢大橋上流のヨシ原問の干潟はヤマトシジミの重要な生育・生息地であったが、今後この水域では、 水草の繁茂によりシジミの放流・漁獲は実際上不可能であろう。


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