シンポジウム 「長良川河口堰運用10年目を問う!」のご報告
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参加者からの報告 長良川シンポジウムに参加して 辻本 喜代志
公共事業追求のきっかけとなった長良川河口堰は、1988年に工事が着工し、1995年5月22日に、運用宣言がなされ、同年7月6日よりゲートがおろされました。
それでも私たち「長良川河口堰建設をやめさせる市民会議」は、ゲート解放へ向けての運動を続けてきました。
その成果が、1997年の河川法改正。200以上の公共事業の中止、2002年12月の「自然再生推進法」の成立をもたらしたと考えています。
アメリカでは、すでに600ものダムが撤去されたそうです。そして、5月22日に、運用発言より10年目に入った長良川河口堰。いらなかった水に、大きすぎる被害。運用を中止して、"最後の大河"のよみがえりを求めて行われたシンポジウムの報告をいたします。
主催 長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
後援 公共事業チェック議員の会(超党派国会議員連盟)/ 公共事業チェックを求めるNGOの会
日時 5月22日(土)午後1時より5時まで
場所 長良川河口堰上下流および長島町中央公民館
PM1:00〜
議員調査団と研究者による河口堰上下流の底質視察
上下船場所地図]
岐阜大学の粕谷志郎教授と山内克典教授によって行われた底質調査を
民主党所属の河村たかし議員、近藤昭一議員、稲見哲男議員が視察しました。
国会議員の皆様には採取したヘドロをシンポジウム会場まで運んでいただき
大変ありがとうございました。
取材に来ていたテレビ局の方が、国会議員がスーツ姿でヘドロを運んでいるなんて
めずらしい光景だと笑っておられました。
長島町公民館に移動
PM2:20〜5:30
シンポジウム「長良川河口堰運用10年目を問う!」
〇「被害は"軽微"ではなかった」
・粕谷志郎(岐阜大学教授・長良川下流域生物層調査団)
・山内克典(岐阜大学教授・長良川下流域生物層調査団)
粕谷先生は、
・汽水域の消滅
・堰上流部の湖沼化
・天然鮎の激減
・環境ホルモンによる飲料水としての懸念
などの生態系への影響をデータにもとづいて報告されました。
またCVMによる評価では長良川河口堰によって失われた自然環境の値段は、建設費の1500億円を遥かに凌ぐことや、国土交通省のいう塩害についても長良川河口堰をその対策とするのは非合理的であることをお話されました。
粕谷教授のレジメ
山内先生は、
・堰上流部で東京ドーム1杯くらいのヘドロが堆積
・マシジミの減少
・カジカ、アユ、ウナギ、モズクガニなどの激減
などの自然環境の変化について報告されました。
堰の運用前に建設省(当時)は「カジカも大丈夫です」というパンフレットを作っていたそうですが、国土交通省の調査でもカジカが激減したのは明白だそうです。
〇「いらなかった水」
・大森恵(「長島河口堰を考える会」・長島町議)
大森さんは長良川河口堰の水がほとんど使われていないことを報告されました。
計画されていた津市ほかの中勢の水道用水や四日市などの北勢の水道用水も、需要が見込めず導水工事を延期していて再開のめども立たないそうです。また長良川河口堰の水は価格が高いので利用しにくく、企業庁の会計をも圧迫しているとのこと。名古屋市も水を引く計画はないのに、利水分の負担金だけを支払い続けているそうです。
工業用水は1滴も使われていないのですが、運用前の円卓会議で「市民の皆さん、私たちに河口堰の水を使わせてください!」と発言した経済同友会の方はどうなったんでしょうか・・・
また河口堰による水位上昇が原因で史跡である千本松原の松がすでに100本も枯れていることもお話いただきました。
大森議員のレジメ
〇「川の怒りを代弁する」
・シジミ 伊藤研司(「しじみプロジェクト」・桑名市議)
・アユ 松山覚 (つり人)
10年間にわたり漁師と市民が協働して調査を続けているしじみプロジェクトからは、世話人の伊藤研司桑名市議から報告していただきました。
4つのラインで57回、マウンド地点では27回行われたの調査のデータが配られ、河口から約15キロ上流の間でシジミがほぼ全滅したことやこの地域が川ではなく排水路となってしまったことをお話しいただきました。
郡上市美並町(旧美並村)在住の松山さんは釣り師の目でみた長良川の変化をお話ししてくださいました。以前に長良川のアユは95%が天然物と聞かされていて半信半疑だったが、いま5%くらいの放流物しか川にいないことを思うとやはりそれは本当だったんだなと感じたそうです。釣りに来る人もめっきり減り、やなに落ちるアユも以前とは比べようもなく少なくなったそうです。
また、コンクリートの護岸工事へのささやかな抵抗として竹やぶによる護岸を訴えて、所有する農地での工事を認めていないそうです。
〇 リレーコメント 「長良川河口堰を視察して」
河村たかし衆議院議員 近藤昭一衆議院議員 稲見哲男衆議院議員
愛知県選出の河村議員はTVでおなじみの名古屋弁で千本松原のことに触れ、薩摩義士の苦悩の跡を壊すのは日本人として放置できない、
右翼・保守的な人にも訴えることができると話されました。同じく愛知県選出の近藤議員は民主党のネクストキャビネットの前環境大臣で、以前にも長良川河口堰の視察にこられたのですが今回もまた運用による被害を視察し何とかしなければならないとおっしゃっていました。大阪府選出の稲見議員は当会代表の天野礼子が後援会会長を務めていることもあり、今回の視察に来てくださいました。いろいろと勉強になり、来てよかったと言っておられました。
稲見議員のホームページへ(今回の視察の報告が活動記録のページに掲載されています)
〇 対談「公共事業を国民の手にとりもどすために」
・菅直人(衆議院議員)VS 五十嵐敬喜(法政大学教授)
菅直人さんと五十嵐先生の対談は聞き応えがありました。議員立法は政権交代の後でも、官僚の思いとおりにさせないための重要な手段であること、官僚は議員さんは行政に口を出すなというそうですが、憲法では行政は内閣が行うものであるとされていて、その内閣は議員が選ぶものだということ、さらにその議員は国民が選ぶものなのですが、市民の投票の不思議なところや、長野県の田中知事のように地方から変革を起こしていく話など短い時間ではありましたが大変興味深いものでした。天野礼子代表からは、菅さんにしばらくは充電していただくのも良いとして、早くまたミスター公共事業として活躍できるよう期待していますとエールが送られました。
お忙しい中、ご参加くださいました皆様、ご報告ご出演いただいた皆様にはこの場をお借りしまして心よりお礼申し上げます。
問合せ先
長良川河口堰建設をやめさせる市民会議
nagarask@mx1.ktroad.ne.jp
FAX 058−265−0417
TEL 058−265−0417