VOL.18-3


では長良川で次に起きるのは何?
C・W・ニコル


 僕たちは次に何が起こるかを予言してきました。国が、公的資金と未来への負債と 、そして生物相の変化において、とっても高価な建設事業を行って、長良川をひどい 目に合わせた時、生き物について一般的な知識を持っている人、あるいは普通の常識 を持った人なら誰でも、長良川の生態系にどんなことが起こるのか、予測できました 。同じことが、諌早湾干拓事業ではもっと悲惨な規模で起きています。そしてさらに 多くの、すでに完成してしまったもの、建設中のもの、計画されたものについても同 じです。
 政府は人々に対し、特に海外で、日本は自然保護や持続可能な資源利用を行い、環 境問題の教育も行っていると言っているけれど、その一方では、政治家は相変わらず 、心の狭い傲慢な官僚と、汚職まみれの建設・金融業界との癒着を続けている。

photo by 伊藤 孝司

 急峻な山岳地帯の流域で、針葉樹と広葉樹の混じった天然林が破壊されると何が起 こるのか、歴史は僕たちに教えてきました。洪水。悲惨な洪水。自然と調和した土地 利用と土木技術によって、僕たちは洪水と闘うことはできるでしょう。しかし、長期 的な解決方法として、単に洪水対策としてだけではなく、自然の多様性、持続的な水 資源供給のためにも、健全な針広混交林を回復させることがもっとも必要であるのは 明らかです。それなのに日本のいたるところで、このことは無視されている。
 僕が住んでいるところでも深刻な洪水がありました。僕の書斎から数十メートル離 れたところを流れる、大正時代まではサケがのぼってきた、普段はおとなしい川が、 コンクリートで護岸された箇所で決壊し、深刻な被害をもたらしました。川に一番近 い建物である僕の道場の前の川岸は、河畔林のおかげで無事でした。しかしその後、 国の行った災害対策というのは、環境アセスメントをしようともせず、多くの費用を かけ、木々を伐採し、川を玉石とコンクリートで固めて真っ直ぐにすることでした。 僕がこのことに抗議すると、この地域で一種の村八分になってしまった。
 日本のあらゆるところで、信じられないほど大規模なものから、降海性の魚類が降 下・遡上ができなくなってしまう、あのくだらない、ちっぽけな砂防ダムにいたるま で、同じような状況を見ることができます。いくつかの砂防ダムには魚道が設けてあ るけれど、国が実際に機能している魚道を造ったのを、僕はまだ見たことがない。ま た、多くの砂防ダムには水すら見あたらない。
 僕は日本国民であることに誇りを持っています。だから、政府の傲慢さや国民無視 、この国を実質的に牛耳っている金融・建設業界、そして裏社会を恥ずかしく思う。
 この地球を守り、良くしていくという国際的な義務を無視することで、日本は環境 保護および文化的分野で自滅しつつある。そして将来、世界中の人々から軽蔑される でしょう。それじゃ次は何?僕たちは屠殺されるのをただ待っているだけの飼い慣ら された家畜なの?それとも考え、責任を果たし得る人間なの?

                               (島田俊夫 訳)


長良川河口堰問題をきっかけに吹き出した“公共事業見直し”の嵐!

 その風は全国を駆けめぐり、「諌早湾干拓」が国民の大きな批判を受けるなど、今 、日本の公共事業政策は大きな曲がり角にきています。そこで、戦後一貫して日本の 森・川・海・湖を「経済発展と市民生活向上」のかけ声のもとに破壊してきた「公共 事業」を子細に検証すると共に、21世紀の日本のあるべき姿を模索するシンポジウ ム「日本の山河と公共事業」を開催します。
 さらに、昨年に引き続き開催する「国際会議」の、今年のテーマは“世界の水資源 問題”です。

 今年6月にニューヨークで開催された国連環境特別総会は、来年の「国連持続可能 な開発委員会」(CSD)の中心テーマを「淡水の確保」に決定しました。「世界の人 口の40パーセントを抱える約80の国々が水不足を経験しており、10億人が清 潔な飲料水を利用できずにいる。これまでの戦争は石油と黄金をめぐって戦われてき たが、いま国家間に紛争を生む最大の可能性を持っているのは“水”である…」とい われています。今や水問題の解決は最優先で取り組むべき地球規模の課題です。
 日本のダム建設の関係者らは、「だから、さらなるダム開発が必要だ。それにダム は地球温暖化を促進しないクリーンなエネルギーを生む。」と主張して、国内と、国 際援助資金による途上国のダム建設をさらに推進しようとしています。特に、世界最 大規模の中国三峡ダム建設に続いて、インドシナ半島では、長い間続いたベトナム戦 争やカンボジア内戦等の混乱が終息した現在、メコン川流域で数カ国にまたがる大規 模なダム群の建設計画が進んでおり、日本のダム建設関係者らは、この大プロジェク トの主導権を握ろうとしています。
 一方、過去50年間、世界のダム開発の主導的立場にあった「世界銀行」は近年、 ダム建設による環境への影響や、立ち退き住民の人権問題について調査する取り組み を始めており、セラゲルディン副総裁は、「これから半世紀、世界銀行は、ダムには あまり積極的に融資しないだろう。ほとんどの国において、水問題の原因となるのは 、水不足ではなく、むしろ非効率で持続不可能な水資源利用のしかたである。」と言 っています。ワールドウォッチ研究所も、『地球白書1996年』の中で、「世界の 水の総使用量の3分の2を占めているのは農業用水で、わずかな割合の削減でも、相 当量の水が都市や環境や他の農民のために使えるようになる」としています。

水問題の真の解決策は何なのか?
私達は世界の専門家を招聘し、水問題の本質を見極め、解決策を模索し、それを日本 の公共事業と援助政策に反映させたいと考えています。

 以下
「日本の山河と公共事業」及び「世界水資源会議」の案内


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