VOL.30-1-D

三重県北中勢地域の水道用水−河口堰がなくとも供給可能−
弁護士 在間 正史

三重県北中勢水道用水供給事業

 1993年に改定された木曽川水系水資源開発基本計画(フルプラン)は、目標年次を2000年として、三重県では水道用水の供給地域を北勢地域に加えて中勢地域に拡大した。北中勢地域の市町村の水道用水の水源は、@自己水源とA北中勢水道用水供給事業(三重県企業庁)からの契約受水で構成されている。

 北中勢水道用水供給事業は、北勢系(計画178,900m3/日、需要がないため河口堰による拡張を休止し現在能力137,700m3/日)と中勢系(計画165,000m3/日、北勢系と同様に現在能力140,216m3/日)に分かれているが、水源は、木曽川総合用水(岩屋ダム)1.00m3/s、三重用水0.67m3/s、雲出川(君ヶ野ダム)1.019m3/sの合計2.689m3/s(開発水量232,100m3/日)で、あとは未利用を含めて河口堰2.84m3/s(開発水量245,376m3/日)である。

2004年フルプランにおける三重県の需給想定調査

 2004年フルプラン改定のために三重県は、2015年(平成27年)を目標年次とする需給想定調査を行った。北中勢地域の水道用水は、取水量ベースで、需要が最大660.791m3/日(2000年実績603,998m3/日)、平均515.260m3/日(2000年実績467,630m3/日)、供給は、自己水源が459,738m3/日、北中勢水道用水供給事業では、河口堰を除く木曽川総合用水等で232,100m3/日、河口堰で63,023m3/日と想定している。しかし、供給は、最近の20年間の2番目の渇水の1987年度(昭和62年度)では、各ダムの供給能力が低下しており、特に、岩屋ダムの供給能力は開発水量の44%しかないとして、同年度の供給率によれば、北中勢水道用水供給事業の供給可能量は、河口堰を除く木曽川総合用水等で153,786m3/日、河口堰で47,267m3/日と想定している。

 この需要想定は、数値操作によるもので、横ばい傾向の実績から離れた過大なものである。それでも、平均水量はもちろん、最大水量でも、河口堰を除いた開発水量が約20万m3/日も供給過剰状態である。日常的に供給過剰であり、1987年度の供給可能量のとき、最大需要において河口堰が必要となる。

木曽川総合用水(岩屋ダム)の渇水時の供給可能性
 1987年度の河川流況でも供給必要量が取水できるならば、需給想定調査結果によっても、河口堰は不要となる。
 岩屋ダムの開発水量は都市用水39.56m3/sであるが、そのうち主要なものでも、13.65m3/sが需要がなく不利用である。愛知県の工業用水2.52m3/sを河口堰建設前と同様に水道用水に転用するととしても、合計11.13m3/sは不利用である。
 木曽川大堰(馬飼)地点で設定されている新規水利権の河川自流取水制限流量が50m3/sと大きい。これが渇水時にダム貯水を減少させる原因である。そこで、岩屋ダムの貯水量が低下したとき、これを渇水調整として削減緩和すると、木曽川総合用水の河川自流取水量が大きく増え、北中勢水道用水供給事業の必要水量の取水が可能となる。
 その結果、北中勢地域の水道用水は、河口堰を除いた供給で最大需要量をも上回り、河口堰は必要がなくなる。

三重県は河口堰の費用負担にあえいでいる
 三重県知事事務引継書では、河口堰の費用負担は、水道用水で約103億円、工業用水で約242億円、合計で約345億円あり、需要がなくて、その回収ができないことに困り果てている。三重県の水利権の更新をさせないためには、この問題を解決することが重要であろう。


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