VOL.23-1


ゲートを上げて、長良川を開放せよ!
建設省の変身が本物であるかが、長良川に問われている
長良川河口堰建設に反対する会 事務局長 天野礼子

 建設省は、治水のあり方を抜本的に見直すことを決め、2月4日に河川審議会に諮問した。洪水を堤防やダムなどの中に抑え込んできたこの数10年間のコンクリート施策を反省し、遊水地や土地の嵩上げ対策などを組み合わせて、流域全体で洪水をやりすごす手法に変身するというのだ。
 私たちの長良川の12年間の闘いが、1997年の河川法改訂についで勝ちとった河川政策の大転換である。具体的には、96年のダニエル・ビアード前開墾局総裁を招いての国際シンポジウムよりの3回の国際シンポジウムが、日本のジャーナリズムに世界の河川行政の転換を広め、さしもの建設省もついに世界の潮流に逆行し続けることができなくなったというわけか。いや私は、建設省河川局の約半分の人たちは、私たちが長良川河口堰の反対を始めた88年から既にそのことを始めたかったが、内気なゆえに(?)自分では言い出せなかったのだと実は思っている。

“集水域管理”が世界の潮流

 さて。世界の潮流は、このネットワークでマグニン氏らも語っているように、そして建設省もやっと採用したように、“集水域管理”である。
 その集水域管理については世界的なキャンペーンが2つ進行中で、その2つとも長良川が舞台に選ばれているので報告したい。
※WWFの「生きている水環境キャンペーン(リビングウォーターズキャンペーン)」
 99年5月のラムサール条約第7回締約国会議の場で、WWF(世界自然保護基金・エジンバラ公総裁)はキャンペーンの開始を宣告した。この2月16日にWWFは、日本の長良川流域を、持続可能な流域管理のモデル地域に選定し、予備調査の開始を記者発表した。

 WWFと「長良川河口堰建設をやめさせる市民会議」が契約し、WWFジャパンが仲介する。WWFインターナショナルのキャンペーナであるマグニン氏が、その決定に助力してくれた。
※世界銀行の「世界ダム委員会」東アジア会議が2月26・27日にベトナムのハノイで開かれる。日本のNGOでは「長良川河口堰建設をやめさせる市民会議」(代表・天野礼子)が唯1選ばれ、「21世紀の入口に巨大開発官庁を誕生させる日本の河川対策と現状」について、長良川をモデルとして講演する。


(写真:ダムを壊すデモンストレーションをするアメリカ天然資源管理局の高官。)

右足と左足が逆行する建設省

 建設省がこのたび発表した新しい政策は、実は私たち“川の国”日本が、百年前までは持っていた「洪水をやりすごす」知恵である。
 世界の先進国では既にこの知恵を採用しつつある。日本の建設省はむしろ、誇りをもって、世界へリーダーシップを示すべきだろう。
 だが、実際の建設省はどうだ。吉野川河口堰への対応を見よ。住民投票の投票率が50パーセントを越えなければ開票させない条項をつけ加えさせた政党(公明党)も問題だが、投票した9割の人が「NO」を突きつけたにもかかわらず、役人の教えるエセ治水論(中山大臣、あなたに教えられずとも、昔から藍の育成のために無堤防主義でやってきた徳島の人々は治水をわかっています)で、民意に抵抗する大臣を演出しているのは誰か。
 そして、長良川では、ヘドロが2メートルもたまっていても「被害は軽微」と言い張る。

 吉野川の投票日直前の1月19日に私が面会を求めた亀井静香元建設大臣(河川法改訂時の大臣・現自民党政調会長)は、私の「吉野川で反対が過半数を越えても建設省は事業をやるといっていますが、これは『住民対話』と『環境重視』を盛り込んだ新河川法の精神を踏みにじるのではありませんか。20世紀に日本人は、繁栄のため自然を後ろのないところまで追いつめました。21世紀はこれを再生する世紀にするべきで、2001年に誕生する国土交通省は、自然再生を国民の理解と負担を得てやるべきではないでしょうか」との質問を聞いて、側の電話で河川局長を呼び出された。
 「あんた方と私がつくった河川法の精神はどうなってるのかね。ダムが自然破壊でないとは通らない話で、嘘をついてまで事業をやるのはよくない。事実を知らせて、よく話し合いを進めてゆかなければ、もう通らない世の中になっていることを理解せんといかんのじゃないか」と諭された。そして「天野さんが、長良川の円卓会議も再開したいとおっしゃってるので聴くように」とも。
 このあと私は竹村公太郎河川局長を訪れ、長良川円卓会議の再開を約束しあった。建設省の信頼する河川工学者・高橋裕氏、環境庁の信頼する法律家・森嶌昭雄氏、生態学の重鎮・川那部浩哉氏を司会にして進めていきたいと私は考えている。

(写真:「RIVER REVIVAL」 アメリカでは100以上のダム撤去が計画されている。)

民主党が“公共事業コントロール法”を再提出へ

 民主党は、“公共事業コントロール法”の再提出を決め、今国会の最重要テーマとした(昨年12月にはそれに伴う予備的調査を衆議院の調査室に求め、その13ヵ所に長良川も入れている)。
 現在の国の財政難は、不必要な公共事業のバラマキによって生じていることを国民に知らしめるためである。
 2月3日には「もう1つの国会」において、五十嵐敬喜氏が民主党に対して質問したところ、鳩山党首は(1)長良川と諌早のゲートを上げるか(2)吉野川を止めるか(3)神戸空港・愛知万博にも反対するか、に対して、いずれも「YES」と答え、「私たちの敵は、私たち自身の内にある“既得権益”であり、これを乗り越えなければ民主党の存在する意味はない」とまで言い切った。
 自民党では、梶山氏や加藤紘1氏らまでもが、小淵政権の公共事業バラマキを批判している。

 私たちは、私たちが進めてきた不必要な公共事業への反対が、いまや“王道”となったことに誇りをもとう。
 そして、建設省がモニタリング調査を終える3月に、長良川を救済するのだ。
 行動を!私たちの望む事業にお金をまわせる政権を誕生させよう。


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