VOL.19-1


国土交通省を作らせてはいけない
長良川河口堰建設に反対する会 事務局長 天野礼子

 国土交通省という巨大トンカチ官庁が生まれようとしているのをご存じだろうか。  建設省、運輸省、国土庁及び北海道開発庁を合体して、役員五万人、予算十兆円(財政投融資などを加えるとその何倍にもなる)、許認可数二五三二という、世界にも例を見ない巨大な開発官庁の出現だ。
 橋本総理は、読売新聞社社主、NHK会長を含む有識者に、行政改革会議をつくらせ、財界と知識人の“五百人委員会”を応援団にして行政改革を行った。国土交通省は、その結果できるものである。社・さは政権を支えているためこれを批判せず、読売、NHK以外の他のマスコミはほとんど論陣を張れていない。従って国民は、このようなシロモノが今の国会で法制化されてしまうことすら知らないのだ。 
 財政改革会議に至ってはもっとひどい。竹下、中曽根、宮澤、村山、武村、連合の前会長といったOBにやらせ、社・さがこれも反対できない体制にしておいての、改革という名の官僚主導。
 どちらも、二○○一年一月一日、すなわち二十一世紀の入口から、この国を再び「山河破壊で国を回してゆくシステム」に再構築してしまうというのに、国民は全くn何も知らされない状態なのだ。
 建設省についても同じことがいえる。
 彼らは、“長良川”を象徴として闘った私たちの行った二年連続シンポジウムによって、「世界の潮流」が「河川政策の見直し」であり、「公共事業の変革」だと暴露され、確かに膝を折った。百年ぶりに河川法を大改訂し、三三八のダム計画を点検し全国十八のダムを中止・休止せざる得なかった。昨年十二月には、橋本総理も「国のすべての公共事業を“時のアセス”(時が経過し目的や地元のニーズが変更した事業を中止する)にかける」と発言するに至った。その裏には、財界からの、「不要な公共事業が財政の足を引っぱっており、これをやめなければ、総理の行・財政改革には協力できない」という圧力もあったからだ。
 しかし景気急落との理由で、彼らが具体的に行ったことは、その “見直し”を“見直し”し、またぞろ公共事業を出動させることだった。
 そして建設省は今、こんな委員会などを作って、あくまで“河川”をその手中から離すまいとしている。
 一つが「ダムフォローアップ委員会」。全国のダム・河口堰を調査するのだが、本当の目的は、環境庁にこの種の委員会を作らせないため。この二面に自然保護協会が報告してくださっている利根川河口堰に関する環境庁の調査は、たまたま建設省がここに委員会を作らなかったため実現できたが、他の問題が多い河川では建設省が先に着手したため、環境庁が調査をすると、国費の二重使いという批判が建設省から出るというわけだ。「ダムフォローアップ委員会」の問題点は、生態学会・陸水学会の会長、魚類学会の長老などを取り込み、さまざまなアメが与えられていること。二つ目は、国土庁と作る「水資源基本問題研究会」で、これは、ダム見直しを見直そうぜというもの。三つ目は、「パートナーシップによる河川管理のあり方に関する研究会」で、建設省のいうことをよく聞くNGOをつくろうというものだ。  まったく。“懲りないヤツら”というのは、建設省のことだ。

 「二十一世紀環境委員会」の発足

   建設省も自民党も、こんなことを考え、全く二〇世紀を反省していない。私たちの運動に一歩ゆずったように見えても、もっとしたたかによみがえっているのだ。
 そこで私は、沖縄大学宇井純、筑紫哲也、内橋克人、月刊「世界」編集長、法政大学五十嵐敬喜、東京水産大学水口憲哉、京都大学河野昭一、島根大学保母武彦らに呼びかけ、「二一世紀環境委員会」を発足させた。その委員会の最初の行動として、「国土交通庁をつくってはいけない」という要請を、加藤紘一、土井たか子、小沢一郎、菅直人、不破哲三ら各党党首などに面談し、行った。そして次なる行動として五月二六日のシンポジウムを用意し、また、「無駄な公共事業緊急リスト」づくりも、全国のNGOに協力を求めて行っている。

 当会誕生より十年の節目に

 ちょうど十年前の今頃、我が「長良川河口堰建設に反対する会」は、開高健を会長として発足した。
 二年前の五月二十二日は、河口堰の運用を、社会党野坂浩賢建設大臣が認可した日。
 私たちの会は、どうやら建設省を変身させる使命を“川の神”から受けているようだ。そこで、今年の秋には、建設省に“レッドカード”を用意する。多くの皆さんが9月には長良川へ参集してくださることをお願いする。

   さて。国土交通省を止めるにはどうすればよいか?簡単なことだ。自民党政権を倒すこと。今回作ってしまった行・財政改革法を改正する政府を作れば良いのだ。あなたの支持する政党に「自民党以外の全ての党が、倒閣に向けて団結すべき」と毎日FAXをし、新聞に投書し、国民に知らしむべし。二一世紀を自分たちで山河回復の世紀にしようではないか。 
 また、昨年九月の国際会議の報告を同封します。かつてはわが日本のダム造りに資金を出していた「世界銀行」でさえ、今ではNGOに助言を求めて「ダム委員会」を作っている。世界中が、環境面からも財政面からも「開発」を止めて二一世紀を回復の時代にしようとしている中、わがニッポンだけが依然として「開発」であることに、もっと皆んなが危機感を持って行動してほしい。

 資金難のため、この大切な時期に、ネットワークをこれまで出せなかったことを深くお詫びします。


| Page 1・ | ネットワーク INDEX | HOME |