VOL.27-4
WWFI のLiving Waters Campaign 「生きている水キャンペーン」とは
長良川ネットワーク 編集部 高木邦子
1971年にうまれたラムサール条約は90年以降、その目的の重点を、従来の「水鳥の渡来地として重要な湿地の保全」から「広く生態系として重要な湿地の保全」へと拡大しつつある。この背景には、淡水域に生息する生物ならびにその生息域である湿地の減少のみならず、水資源の危機に対する意識がある。
九九年の第七回締約国会議に際して、WWFインターナショナルは参加国に「川、湖、沼、池、といった個々の湿地に焦点を当てるというよりも、むしろ川と湖を含めた集水域という、より大きな範囲で湿地全体を保全していく必要がある」ことを訴え、「生きている水キャンペーン」の開始を発表した。
このキャンペーンでは「人間・自然の両方にとって大切な淡水を、持続可能なレベルで利用する」ことを目指しており、具体的には2002年までに以下の二点を目標として活動を行っていく。
キャンペーンの目標
(1)自然保護と人間の持続的な自然利用の両立を図る「集水域管理」に基づくモデルを示す。プロジェクトを、世界のいくつかの大河川流域で実地する事により、全世界の人々が、生物資源や生物からの恵み(米などの食料、薬用植物から抽出される薬など)を享受できるようにする。
(2) 全世界で二十五万平方キロ(本州と九州を合わせたくらいの面積に相当する)の新たな保護区を設立する。
リビングウォーターズキャンペーンに選ばれた地域
■パンタナル(ブラジル、パラグアイ、ボリビア)
■コンゴ、ザイール盆地(中央アフリカ)
■東オーストラリア
■メコン川(東南アジア)
■長良川(日本)
■キナバタンガン下流域(マレーシア)
■ドナウ(河口デルタ)
■カフエ湿原(ザンビア)
■ニジェール川(西アフリカ)
■オリノコ川(南米大陸北部)
長良川から始まる日本の集水域管理
現在の日本では「集水域」という言葉が、市民権を得ているとは言い難い。結局のところ、局地的な自然破壊と保護問題という枠から抜け出せずにいる、というのが実情であろう。しかし、すでに新しい発想に基づいた取り組みも始められようとしている。
日本では集水域管理のための具体的な案作りがNGOによって始められた。その最初の場所が長良川流域である。この場所は日本の中でも自然度が高いこと、ならびに保全に関して全国的な関心が集まっていることから、WWFインターナショナルの「生きている水キャンペーン」のモデル地域に選ばれた。WWFでは今後、地域団体と共同で行う予備調査に基づいて、流域全体に必要な保全策を提案していく。 (2000年11月 WWF発行 No.274特集「水」より抜粋)
WWFジャパンへの期待
世界でも数少ない地域での活動に「長良川」が選ばれた事は、日本の川の歴史が認められたことであり、また日本のこれからの水環境保全にとってもたいへん重要なことだと思います。
2000年にこのキャンペーンに選ばれてから、2002年の今年までの取りくみ、また、これから行おうとしているプロジェクトを日本での担当であるWWFジャパンから皆様にこの紙面で報告して頂こうとお願いしましたが、「“リヴィングウォーターズキャンペーン”の担当者が今年の4月から11月の新任を募集する時までいないので書けない、他の者にこのような大きなプロジェクトは書けない」という理由で、書いていただくことができませんでした。
私たちは長良川でのWWFジャパンの取り組みが、これからの日本に新しい水環境保全のモデルを作ってくれることを期待しています。新しい新任が選ばれてから、どのような活動がされるのか、次号ではお知らせできると思います。